初心者の為の透明水彩・紙の段

このシリーズでは、これまで「透明水彩をする上で必要なもの」「絵の具」「筆」まで見てきました。

今回は透明水彩に最低限必要なもので最も重要なもの、水彩紙についてのお話です。

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お金を掛ける時の優先順位は「水彩紙 > 筆 > 絵の具」

「道具を揃える編」でもお話しましたが、一番お金をかけた方が良いのは水彩紙です。

かなり極端な話をしますと、せっかくシュミンケの高級絵具を使ってるのに、肝心の紙が透明水彩向きには作られていない画用紙では、透明水彩の特徴を活かすことが出来ず、絵の完成度がかなり低くなってしまうんですね。…かと言って、いくら水彩紙であっても自分の塗りスタイルに合わないものだと、塗ってても楽しくないものです。

逆に言うと(これまた暴論になちゃいますが)、自分の塗りスタイルに合った水彩紙を使っているのであれば、シュミンケの高級絵具は必ずしも必須アイテムではないです。もちろんあったらあったで当然モチベーションも完成度も上がりますが、紙(と筆)が良ければぶっちゃけ絵の具はそこまで高いものを無理して使わなくても良いのでは、と思います。

そもそも水彩紙ってどんなもの?

紙の表面ににじみ止め(ドーサまたはサイジングとも)の処理が施してあり、絵の具の色や透明水彩の様々な技法を綺麗に表現できるようになっているものを一般的に水彩紙と呼ぶことが多いです。両面ににじみどめが施されていて、表裏どちらでも描けるようになっている紙もあります(ランプライトなど)。

水彩紙の素材と価格について

紙の原料「パルプ」の種類によって3種類あります。

初めての人はいきなり高価なコットンパルプから始めるのではなく、まず「木材パルプ」と「混合パルプ」から始めるのが良いです。使ってみて「なんか思ってたんと違う…」となったら、その時点でコットンパルプの購入を検討するのが一番お財布にも優しいかなと。

そんな私はホワイトワトソンとの相性が悪すぎて、2週間もしないうちにウォーターフォードとストラスモアをいきなりハガキサイズで買ってしまいましたが(ぉ)。

コットンパルプ

ウォーターフォード
みんな大好きウォーターフォード

コットン100%(綿パルプ)で作られた紙です。絵の具の乾きが比較的ゆっくりなので、透明水彩のすべての技法を行うことが出来ます。

日本で販売されているコットン100%の紙は大半が輸入品で、基本的に高価です。高価格帯水彩紙の代表格・アルシュは、最小サイズであってもパッドタイプは4000円前後、ブロックタイプは5000円前後と非常に高価。なかなか気軽には使えないです。

ただ、最近ではランプライトやBeアート/Doアートのように、国産で比較的安価で購入できるコットン100%の紙も増えてきていますし、ウォーターフォードやストラスモアなど、輸入品でありながら比較的手が届きやすい価格帯のものもあります。

湿気に死ぬほど弱いので、ジップロック等の密閉できる袋に乾燥剤と一緒に入れての保管が基本になります。

主なブランド
  • アルシュ
  • ウォーターフォード
  • ストラスモア インペリアル
  • アヴァロン
  • ランプライト
  • キャンソン ヘリテージ
  • ストーンヘンジ アクア
  • ハーネミューレ セザンヌ
  • ファブリアーノ アルティスティコ

木材パルプ

コットマン
代表的なものはコットマン

学校などで使うノート同様、木材の繊維で作られている紙。単に「パルプ紙」と呼ばれていたら通常はこちらの方を指している事が多いです。

こちらはコットンパルプとは逆に、絵の具の乾きが比較的早いです。そのため、水を多く使う技法は基本的に苦手です。出来ない訳ではありませんが難易度は一気に跳ね上がります。発色は良いのですが絵の具の付き方が弱く、上から色を重ねると下の色が溶け出してしまうので、重ね塗りには向きません。目の細い紙ほど重ね塗りすると紙肌が荒れます。また紙によってはマスキングが全く使えません。

お値段は比較的安価。初めての方はまずこちらから使ってみるのをオススメします。

主なブランド
  • コットマン
  • ヴィフアール
  • アルビレオ
  • モンヴァルキャンソン
  • シリウス
  • マーメイドリップル
  • ハーネミューレ トルション
  • ワーグマン

ヴィフアールとワーグマンは混合パルプという話も聞いた事があるのですが、原料の詳細が公式サイトでも書かれていないので、便宜上こちらにカテゴライズしています。

混合パルプ

ホワイトワトソン
ホワイトワトソン(コットン+木材パルプ混合)

コットンと木材パルプ(あるいは竹やケナフなど)のいいとこ取りをした紙なのですが、紙によってはコットン100%に近かったり木材パルプ寄りだったりまちまち。私はホワイトワトソンしか持ってないので他の混合パルプ紙がどうなのかわからないのですが、重ね塗りや水を多く使う技法を多用する人の場合は混合パルプは合わないかも…。

主なブランド
  • ワトソン/ホワイトワトソン
  • ホワイトアイビス
  • クレスター
  • ハーネミューレ バンブー(竹パルプ90%+コットン10%)
  • ファブリアーノ5(パルプ50%+コットン50%)
  • ファブリアーノ ウォーターカラーパッド ボタニカル(パルプ75%+コットン25%)
ホワイトワトソンで簡単にお絵描き
混色テストでホワイトワトソンを使用

私も最初はホワイトワトソンから始めたのですが、重ね塗り派なのであまり相性が良くなく、最近は専ら色見本を作る時や混色のテストをやる時に使ってます。あとは何かサラッと描きたい時とか。

なおワトソン紙にはご紹介したホワイトワトソン以外にも、クリーム色のナチュラルワトソンがあるのですが、寒色系や黒系がメインの絵だと全体的にくすんだ仕上がりになってしまうので、初心者向きではないです。逆に茶色多めの絵なら暖かみのある仕上がりになります。

本来「ワトソン」といえばナチュラルワトソンと呼ばれている方を指します。実は正式な名称ではないのですが、ホワイトワトソンと区別する為にこう呼ばれたりもします。初心者の方はこのナチュラルではなく、ホワイトの方がおすすめです。

綴じ方の種類

水彩紙の綴じ方にもいくつか種類があり、

  • スケッチブックタイプ
  • ブロックタイプ
  • パッドタイプ
  • 平版(カット紙)

の4種類が主流です。外で描くことが多いならスケッチブックタイプ、じっくり描く場合であればブロックタイプ…といったように使い分けることも出来ますが、平版はどちらかというとお試しで買うタイプかな…。

パッドタイプは基本的に紙の厚みがない物が圧倒的に多いので、ガッツリ塗る場合は水張りが必要です。ただ、厚みの薄いものは線画をプリントアウトして使う事が出来るので、デメリットばかりでもないです。色見本を作るのに線画が大量に必要な場合に使えます。ただし、機種やインクの種類によっては印刷出来なかったりするので、印刷前にプリンターの仕様を確認しましょう。

ブロックタイプはそのまま絵を描いて、描き終わったらペーパーナイフで剥がします。水張り無しでそのまま塗ることが出来ますが、水の使用量が多いと紙が波打ってしまったり、下の紙が風邪を引く事があります。水を多く使う場合は、塗る前に剥がして水張りを行ってから塗る方がいいです。

表面の荒さにも種類がある

メーカーによって若干の違いがありますが、紙の表面は「細目(Hot Press)」「中目(Cold Press)」「荒目(Rough)」の3種類に分かれます。ただし、細目となっていても「Cold Press」の併記がある場合は中目になります。アルシュはこの様なややこしい表記になっているので購入の際には注意が必要です。

細目の紙は細かな描写に優れていますが、乾くのが早いので広範囲の塗りはムラになりがち。一方、荒目の紙は乾くのがゆっくりになるのでムラが出来にくいのですが、細かな描写はやや苦手、ペン入れ時に引っかかりやすい、スキャンした時に紙目がくっきり出てしまう…等のデメリットもあります。紙にもよりますが中目はその中間くらいなので、迷ったら中目(アルシュの場合は細目)を選ぶと良いです。

最初は木材パルプか混合パルプの紙から始めよう

コットマン
コストを抑えたいならコットマンかヴィフアール

最初に買う水彩紙として、まずはコスパ重視で木材パルプか混合パルプから始めるのがおすすめです。オススメの紙は入手しやすい順に

  1. ホワイトワトソン
  2. ヴィフアール
  3. コットマン(中目か荒目)

の3種類。一気に全種類買って使うよりも、1種類ずつ順番にお試しするのが良いと思います。この3種類の紙で何枚か描いてからホワイトアイビスをお試ししてみるのが良いかなと。…と言いつつ、筆者は未だにホワイトアイビスをお試し出来てません…(そのうちちゃんと買おう…)

透明水彩に慣れてきたらコットン紙にも触ってみよう

少し透明水彩に慣れてきたら、前述のパルプ紙も使いつつコットン紙をお試ししてみて欲しいです。…とはいえ、最初からいきなり高価なアルシュを使うのはオススメしないです。高い紙だから万人向けというわけではありません(アルシュはむしろ人を選ぶ紙らしいので…)。なので、まずは価格的にも入手経路的にも買いやすい紙からお試しするのがオススメです。

ウォーターフォードホワイト/ナチュラル

ウォーターフォード

イギリス・セントカスバーツ ミル社製。超ド定番のコットン紙。値段と性能のバランスがとても良く、初心者からプロユースまで幅広く愛用されています。細目・中目・荒目の3種類(ナチュラルは中目のみ)ありますが、中目が最も紙質のクセがなくてオススメです。発色はちょっと控え目で、落ち着いた仕上がり。

紙の色はホワイトとナチュラルの2種類あり、このうちナチュラルは絵の具の乾き方がホワイトよりもゆっくりなので、色塗りでアワアワしてしまう方はまずナチュラルの方から試されると良いと思います。

ストラスモア インペリアル

ストラスモア インペリアル

アメリカ・ストラスモア社製。単に「ストラスモア水彩紙」と呼ばれている事が多いですが、正式名称は「ストラスモア インペリアル」です。価格帯もウォーターフォードと同じ位なので、一緒に買ってお試ししてもいいと思います。

紙表面が強いので、リフティングや消しゴム掛けなどで紙を強めにこすっても毛羽立たちにくいです。また色の定着もそこまで強くないので重ね塗りもリフティングも余裕でこなせます。個人的にはウォーターフォードよりも扱いやすい紙。発色はかなり鮮やかで、明るい雰囲気にしたい場合にはこちらがオススメ。

ただ、絵の具の乾きが若干早いので、あまり時間をかけて塗る紙ではないです。でも個人的には超イチオシの紙。

ランプライト

ランプライト

muse社製、国産のコットン紙。コットン紙の中でもかなり安いので、初めて買うコットン紙として超オススメ。あまり目が荒くないのでスルスル描けるし、気持ちよく塗れます。紙色はややナチュラルめなので、全体的に柔らかな仕上がりになります。とはいえ決して発色が良くない訳でもなく、やや落ち着いた色味にはなるものの、綺麗に出ます。乾きはゆっくりめなので修正も利きますし、リフティングもかなり楽。きちんと乾かしてからであれば重ね塗りも余裕で出来ます。ある意味ウォーターフォードやアルシュよりも最強なのでは。

あとこの紙、表と裏のどちらにも描けます。地味だけど割と有難い仕様。

もっといろんな紙を使ってみたいけど、どうしたらいい?

数種類の紙が1枚ずつ(メーカーによっては2枚だったりする)入っているお試しパックがオススメです。使いたい紙が決まっている場合は、ポストカードサイズかカット版がお試し用途としてはオススメ。

ポストカードサイズがお試しするには一番いいかも
お試しパックがない紙はカット版やポストカードサイズを買うのも手

私の場合はmuse社のBeアート・Doアートが気になっていたのでミューズのトライアルセットを買いました。そしてオリオン社の紙はまだ1種類も試せていない状態なので、近いうちにオリオンのスターターパックを買う予定です。アクリルデネブとかセザンヌとか、オリオン社取扱品は気になる紙てんこ盛りなので…

アソートパックを買う

ホルベイン 水彩紙コレクションブック(SM/F4)

ホルベインが販売している水彩紙のアソートブック。以前はポストカードサイズのものもあったようですが、現在はスケッチブックタイプのみ。

収録している紙(各種2枚ずつ)
  • ウォーターフォード ナチュラル
  • ウォーターフォード ホワイト中目
  • ストラスモア インペリアル
  • アヴァロン
  • クレスター
  • ホワイトアイビス

ミューズポストカード トライアルセット

水彩紙と画学紙のアソートパック。おそらくお試しアソートパックの中でも一番お安く買えるものではなかろうか。500円ワンコインでお釣りが来るので一番気軽に買えて気軽に使えるパック。

収録している紙(各種2枚ずつ)
  • ワトソン 特厚口
  • ホワイトワトソン 厚口
  • ランプライト
  • Doアートペーパー
  • Beアートペーパー
  • ニューブレダン(※版画用紙)
  • マーメイドリップル
  • ニューTMKポスター(※画学紙)

オリオン 水彩紙スターターパック(ポストカード/B5)

12種類の紙が1枚ずつ入ったお試しパック。中〜高価格帯のハーネミューレ社製品もお試し出来ます。お試しパックとしては入ってる紙の種類が一番多いです。

収録している紙(各種1枚ずつ)
  • シリウス 特厚口
  • ワーグマン
  • アクリルデネブ
  • こみっくでねぶ(※アルコールマーカー専用紙)
  • アルデバラン(※版画紙)
  • 麻王(※和紙)
  • ハーネミューレ セザンヌ 細目
  • ハーネミューレ セザンヌ 中目
  • ハーネミューレ セザンヌ 荒目
  • ハーネミューレ バンブー
  • ハーネミューレ トルション
  • ハーネミューレ ブリタニア

画材販売.jpオリジナル 水彩紙セット

こちらはお店オリジナルの水彩紙詰め合わせセット。このセットの為に紙を新たに取り寄せてカットし、手作業で各種1枚ずつ袋詰しているそう。そのため風邪を引いた紙が届いたというトラブルが起きにくいです。セットは封入している紙の種類などによって

  1. CLASSICS(使いやすい中目コットン紙オンリー)
  2. ALTERNATIVE(ミューズ社販売の紙メイン)
  3. STANDARD(木材パルプ・複合パルプ紙オンリー)
  4. SMOOTH(細目・極細目の紙メイン/細密画向け)

の4種類あります。ここではCLASSICのみご紹介。

CLASSICS 収録紙
  • アルシュ 細目
  • ウォーターフォードホワイト 中目
  • ウォーターフォードナチュラル
  • ハーネミューレ セザンヌ 中目
  • ストラスモア インペリアル

なおストーンヘンジアクアがお試し出来るパックは、現状では画材販売.jpさんの水彩紙セットしか無いので、ストーンヘンジアクアを使ってみたい方はALTERNATIVEがオススメ。

ポストカードパックを買う

お試しパックで気に入った紙があるけどいきなり大きいサイズは買えない…という場合、ポストカードサイズでの販売がある紙であればこちらを買ってさらに使い込んでみるのも手。1000〜1500円前後で買えるので、ちょっと高い紙やコットン紙を気軽に試せます。もしそれで自分には合わなくても、絵や混色の練習用や色見本用に使ったりすればいいので…

カット版を買う

B5やA4サイズ相当にカットされて少枚数で入っているパックを買うのも手です。それでも大きければ、更に自分で手頃な大きさにカットして使う事もできます。オリオンの紙はこういうカット版の種類が豊富です。

ホルベインはコットン紙とクレスターのみカット版の展開があります。中でもストラスモアの細目はこのカット版でしか買えません。

オリオンの画材紙パックの中でもアクリルデネブ・シリウス・ワーグマンに関しては、50枚入った超お得な「バーゲンパック」もあります。大量に必要になった時には便利。50枚パック×2セット品もあります。

ATCを買う

ATCってなんぞや?

アーティストトレーディングカード/Artist Trading Cards(以下ATC)とは、主に欧米のスクラップブッキング愛好者やスタンプアーティスト、画家、イラストレーター、デザイナー、写真家などの間で近年盛り上がりを見せているハンドメイド作品です。
Artist Trading Cardsの頭文字をとって「ATC(エーティーシー)」と呼ばれています。

アーティストトレーディングカード用紙 「アーティストトレーディングカード」 | 製品・サービス | Too

ATCのルールは、ベースボールカードサイズ(約64×89mm)の紙を使う事。これ以外にルールはありません。縦書きでも横書きでも良いし、どんな画材を使って作っても良いので、かなり自由に作ることが出来ます。クラフトでもOK。

アルシュをもっと気軽に試したい場合には良い…かも?

ポストカードサイズの販売がないアルシュを最も安く買ってお試しする最終手段として、ATCを買うという選択肢もあるのかなと。ただしサイズがサイズなので小さいイラストを描くのが苦痛じゃない人向けです。万人向けとは言いにくいので、普通にカット版を買う方が無難だとは思いますが、あくまでこういう手段もあるよという事で…。

アルシュのATCボードはARTs*LABoさんのオンラインストアで買う事ができます。

ARTs*LABoさんのオンラインストアではこの他にも、日本ではほぼ見かけない激レア水彩紙「セヌリエ水彩紙」のATCボードも販売していたりします。

まとめ: 運命の紙に出会うのは難しい

水彩紙いろいろ

ここまで水彩紙について見てきましたが、実はお気に入りの紙は見つかったけど「これは…いいものだ!」っていう超ステレオタイプな紙にはまだ巡り会えていないです。そもそもこれを書いてる時点でまだ高価格帯の紙(特にアルシュ)を試せていないのが一番痛い。(ノ∀`)タハー

でも胸を張っておすすめできるのはランプライト! 初めて使った時の感動は今でも忘れられない。そしてお財布に優しい。ストラスモアも乾くのが早い紙だけど大好きです。使い心地やコスパの良さは勿論なのですが、スキャンしても紙目が目立ちにくいのは有難い…。個人的にはウォーターフォードよりも塗りやすくて好き。

とはいえ、どの紙が良いかどうかは個人差が出やすいところなので、この記事が少しでも何かの参考になってくれれば(なるのか…?)幸いです。お気に入りの紙が見つかりますように!

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