初心者の為の透明水彩・筆の段

これまでこのシリーズで「必要な道具」と「水彩絵具」について書いてきました。

今回は透明水彩の「筆」のお話です。ただ私もまだまだ筆については手探り状態でして、他のサイトさんみたいに詳しい使用感などは突っ込んで書くことが出来ないので、その点はご容赦ください…

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どれを買えば良いのかわからない問題

筆の形状はどれがいい?

大まかに分けると「丸筆」と「平筆」の2種類。なお平筆の場合、

  • フラット(一般的な平筆)
  • フィルバート(フラット筆が丸くなったもの)
  • オーバル、キャットタン(先端が細くなった丸筆と平筆のいいとこ取りな筆)
  • ファン(扇形)
  • アングル、アンギュラー(斜めになったもの)

などと色々種類があるのですが、通常「フラット」か「フィルバート」のどちらかがあれば十分です。

筆の材質はどんなものが良い?

コリンスキーが最もオススメなのですが、如何せん天然イタチ毛100%の筆なので細い筆でもそこそこ高価です。また最近では原料問題なども絡んで、筆の太さによっては入手しにくくなっていたりするものもあります。これを書いている私も未だにコリンスキーの筆は買えてません…

そこで選択肢として出てくるのがナイロン筆。このうち、ナイロンと動物毛をブレンドしたものや、ナイロンに特殊加工を施すことで天然毛に近い使い心地を再現したものは、使いやすさとコスパに優れているので、天然毛の筆は買えないけどちょっといい筆が欲しいと思ったときにはこちらが良いです。

とりあえず太さの異なる筆が3本あれば一通りの事はできる

いきなり極論を出してますが、最初から10本も筆を買う必要はないです。どんなに多くても5本くらいで最初は十分です。具体的に述べると

  • 細部を描くための筆: 0〜2号くらい
  • メインの塗りで使う筆: 使う紙のサイズによって4〜8号くらい
  • 広範囲を塗るための太い筆: 10〜14号くらいの丸筆、または平筆

この太さのものを1本ずつ買えば大抵のものは描けるはず。私はメインで使う紙のサイズがハガキ〜SM程度で、それ以上の大きいサイズで描く事があまりないので、これよりも細めにしています(おおよそこんな構成になるように筆を買ってます↓)

  • 細部用→ 00〜0号筆
  • メイン→ 2〜4号筆
  • 広範囲用→ 6〜8号筆

よくAmazonで10本セットになってる売られてる奴とかありますけど、正直「それ全部必要なん?」って話です。あとこの手の筆は毛の質に不安要素が隠れている事があるので個人的にはおすすめしないです。

なお、Amazonでキーワード検索した時、URIの末尾に&emi=AN1VRQENFRJN5を付けて再検索した時に検索結果から除外される様なヤツは、基本的には買わない方が良いです(※ちなみにこれをペンタブの検索画面でやると中華タブがごっそり消えるので場合によってはサクラチェッカーの方が良いです)。

オススメの筆メーカー

ここから個人的におすすめな筆のメーカーを見ていくよ!

ホルベイン

リセーブルといえばホルベイン。

混合されている毛によって種類が異なりますが、ここでは愛用者が多いと思われるものにだけ絞ってご紹介します。

ブラックリセーブル 700/SQ/ch-A

リス毛との混合。私が使っているものはこれです。毛先が柔らかいので面白いくらいにスルスル描けます。オーソドックスな700シリーズと、鋭目の穂先をしたSQシリーズ、クイル型になっているch-Aシリーズの3種類。700は長軸、SQとch-Aは短軸です。

最初はSQを使っていたんですが、水の含みが良すぎて細密描写がしづらかったので後で700Rを買い足し…というわけのわからん事をしていますw SQは1号でも結構太い筆なので、広範囲を塗る時にはSQを使って、細かい所は700Rで塗る…という感じで使い分けています。しかしいずれはSQ1本で全部賄えるように使いこなしたい…

あと毛が柔らかいので触り心地最高。

ニューリセーブル 3100/ミニリセーブル 31

こちらは羊毛との混合。特にニューリセーブル 3100Rの20号は、YouTubeで「おじいちゃん先生」こと柴崎先生や、「つらら庵」のしょーちん。氏が激推ししているので、おそらくこのシリーズで一番売れてる筆。

実はこっちを買うかブラックリセーブルを買うかでめちゃくちゃ悩んで、悩みに悩んだ末にブラックリセーブルを買ったんですが、それでもそのうち買いたいなと思ってるシリーズ。

因みにニューリセーブルとミニリセーブルの違いは長軸か短軸かの違いのみなので、野外スケッチをするのであればミニ、そうでなければニューといった買い方で良いと思います。ただ手に入りやすさで言えばニューリセーブルの方かな…。ブラックリセーブルよりも気持ち硬めの筆なので、筆先のコントロールはやりやすいかも。初めての方はこちらが良いです。

パラリセーブル 350

イタチ毛との混合。リセーブル筆が欲しいと思った時に色々調べていた時、検索してもあまり個人のレビューを見かけなかったので結局スルーしてしまったのですが、「ボタニカルアート 画筆5本セット」にはこちらが採用されています。イタチ毛混合の割には描き心地がナイロンっぽくて硬いかも…というレビューを見かけたので、柔らかい描き心地を求める人にはやや難しい筆。逆に言うとコシが強いという事なので、筆先のコントロールがしやすく、細密描写に適しているのではと思われます。

ナムラ(名村大成堂)

こちらも愛用者が多い筆メーカー。学童用の筆からプロ用の洋画筆・日本画用筆まで幅広く取り扱っている老舗でもあります。ナムラの筆は特殊加工していないタイプのナイロン筆もリーズナブルかつ使いやすいので、これから水彩を始める人にぜひ最初の筆として使って欲しいです。

公式twitterでは筆の豆知識系メモや詳しい製品紹介などが充実しています。ジャンルごとにモーメントを作って下さっていますので、筆選びのお供に是非。

PCセーブル

ターコイズ色のボディが可愛い茶ナイロンの筆。愛用者多し。

後述するCNクリスタルとどっちを買うか迷って、結局こちらは買わなかったんですが、CNクリスタルよりも柔らかいらしいのでちょっと気になってる。太さや形状もCNクリスタルより多いですし、必要十分なサイズの筆が揃うセット販売もあるので、初めての筆におすすめ。

CNクリスタル

おしゃれな透明ボディの茶ナイロン筆。私が愛用しているのはこちらです。

適度な硬さでとても使いやすい筆ではあるのですが、0号でも2号くらいの太さがあるほど筆が太いので、細密描写はあまり得意じゃないです。なので、この0号よりも細い筆が必要な場合は別のブランドで買う必要があるのですが、クセがなく扱いやすい筆なので、こちらも初めての方にオススメ。

Norme(ノルム)/Raffine(ラフィーネ)

「EXCLUSIVE SYN SABLE」(エクスクルーシブ センスティック セーブル)という次世代ナイロンを採用した筆。

黒いボディのノルムと、白いボディで穂先がちょっと細長くなっているラフィーネの2種類があり、どっちを買うかで悩むのですが、こちら公式twitterで詳しく検証していらっしゃいます。

この検証結果から見るに、オールマイティに使いたいならノルム、入り抜き・細密描写重視ならラフィーネ…ってところかな。自分の絵的にはノルムの方があってるかなぁ。あと筆のラインナップにも違いがあって、ノルムは0号筆があるのに対し、ラフィーネは一番細い筆でも4号(LRの場合)になります。が、そもそもラフィーネ自体細密画に特化した筆なので4号でも問題ないと思います。

SK STARS

おそらく6号筆が一番お安く買える(※5000円前後で買える)コリンスキー筆では。ラファエルとかW&Nのシリーズ7など、有名どころになると6号筆でもとんでもない価格になってしまうので、コリンスキーは欲しいけどそんなに高いのは買えない…! という、そんなあなた(私も含む)にそっとオススメしたいSK STARS。

ナムラさんのコリンスキー筆は他にも「SK-Meteor」「SK-Mercury」がありますが、どちらも特徴的な穂先をしているので、オーソドックスな形状をしたSK STARSの方が扱いやすいかも。

ターレンス/ロイヤルターレンス

オランダ発の画材メーカー。耐光性のあるカラーインク「エコライン」や、透明水彩絵具「レンブラント」のダスクカラーで有名ですね。ただカラーインクや絵具はよく聞くブランドなのですが、筆の方はあんまり聞かないような…。一応レンブラントの筆を1本だけですが持っているのでご紹介。

ヴァンゴッホ ビジュアル筆

ナイロンと山羊毛の混合。セット販売もあるので初心者からプロまで愛用している方は結構いる。ただ見た感じだと毛がやや硬め? な印象を受けたので、どちらかといえば水彩よりはガッシュ(不透明水彩)向けなのかも。セット品は必要最低限の太さの筆が揃うので、透明水彩を始める人が買う場合にはとても良いと思います。

レンブラント 水彩画用筆(ロイヤルターレンス)

私が持っているのはこちら。毛の材質によってシリーズ区別があり、

  • 100(ピュアコリンスキー)
  • 110(ピュアレッドセーブル)
  • 114(リス毛・ラウンドタイプ)
  • 132(リス毛・オーバルタイプ)
  • 135(リス毛・フランス画筆タイプ)

といった感じに分かれています。このうち私が持っているのはシリーズ110ですが、何故か4号筆しか買わなかったので、他の筆との比較ができないという(ダメじゃん)。そして筆は柔らかいんだけど、ちょっと毛先がパサパサしててまとまりにくいかな…? 使った後はブラシソフターを使ったメンテナンスが必要かも。

またシリーズ100は、6号筆までであれば比較的お求めやすい価格なので、ナムラに次いで手を出しやすいコリンスキー筆なのですが、筆の太さが1号くらい違う(細い)のでは…というレビューがあったので、大判サイズで描く人は他の筆を買った方が良いかも。

あとシリーズ100・110は金属部分が金メッキなので、見た目のゴージャス感を楽しみたい人にもオススメ。

クサカベ

え、クサカベの水彩用筆…? って思うでしょ。実は最近出たんですよ、水彩用の筆が…!

そもそもクサカベさんは筆を全く出していない訳ではない(油彩用とアクリル用は出ている)のだが、水彩画専用に特化したものはこれまで無かったっぽいんですね。そこに満を持して2021年末に登場したのが「アクアレッロ(短軸)」と「サイン(長軸)」です。

アクアレッロ/サイン

PBT化学繊維を採用した人工毛筆でありながら、天然コリンスキーに近い使い心地を再現した筆。コシが強く水含みも良いので、毛先のまとまりが良いです。15000回の摩耗テストにも耐える強度を持った高耐久性に優れた筆。出来たてほやほやのシリーズなので、まだまだ使ってるという声を見ないのですが、それもそのはず。現在世界堂さんでしかお取り扱いがありません。すごく良い筆なのでもっとお取り扱い店舗増えて欲しい…

なおアクアレッロとサインの違いは軸の長さのみなので、お好きな方を選ぶといいです。ただしサインの筆サイズは8号までなので、それ以上の太さが欲しい場合は12号まで展開があるアクアレッロ一択です。

アムス

使いやすさとコストの良さで愛用者多し。おすすめはアルテージュ キャムロンプロ。

アルテージュ キャムロンプロ

特殊加工によりシャープな描き味と絵の具離れの良さを実現させているナイロン筆。気にはなりつつもまだ買えていないのですが、適度にコシがあってとても塗りやすいとか。ラウンド3本+フラット2本で構成されたセット品の販売あり。

アルテージュ キャムロンプロ プラタ

こちらは細密画用の極細筆シリーズ。水彩だけでなく、ネイルアート用の筆として買う人が多いイメージ。

アルテージュ アクアレリスト900

ナイロンと新世代ナイロン「PBT」の混合で、リス毛に近い質感と使い心地と水含みの良さを再現しているとのこと。何故かよく見かけるのはキャッツタンが多い印象。

インターロン

ナイロンに形状記憶加工を施している筆で、水含みの良さとコスパに大変優れている筆。比較対象としてはキャムロンプロになりますが、価格帯も同じくらいかもう少し安いです。こちらも気になってはいるのだがまだ買えていない筆。模型やプラモの塗装用に買う人もいるらしい。

水彩用に買うのであれば「短軸タイプ」がおすすめです。油彩やアクリルにも使えます。

小学校で使う筆ってモノとしてはどうなん?

小学校で使う筆…具体的に商品名を言うと

  • ぺんてる ネオセーブル
  • サクラ ネオセブロン

の事なんですが、私も一番最初はここからスタートしたので、とりあえずの筆として買うのには悪くないです。

が、ネオセーブルは水含みがあまり良くないので結構パサつきます。またネオセブロンは変に柔らかいので塗ってる途中で筆先がヘタレます。そしてどちらも毛先に曲がりクセが付きやすいので、使っていくうちに「思ってたんと違う…」ってなると思います。たまにしか描かない人ならこれでも良いのかもしれませんが、週イチであろうが月イチであろうが定期的に透明水彩で描く人の場合は、もう少しいい筆を買った方が幸せになれます。

水彩用だと物足りない感が出てきますが、マスキング用の筆としてこれらを買うのはアリです。

水筆はどうなの?

こちらも野外スケッチ用やマスキング用として買うのであればアリですが、ガッツリ描きたい時の筆としてはちょっと無理があるのかなと。小さいサイズの絵(ATC・名刺位の大きさ)を描くぶんには良いと思いますが、大きいサイズの絵は厳しそう。ただ水筆は100均でも買えるので、学校用の筆同様に「とりあえずの筆」として使う事は一応出来ます。

なお、100均で売られている水彩用の筆は基本的にオススメしません。

まとめ

というわけで、今回は筆のお話でした。

筆ってなかなか表には現れにくいところではあるので、案外「どれ使っても同じだろ」って思われがち。が、楽しく描きたいのであればやはり道具にもこだわった方が良い、というのが絵の具以上に顕著に現れる最もたるものが筆と紙だと思っています。紙のようにお試し版を買えるものではないけれども、気になったものを同じサイズで1本ずつ買って使い比べてみるのが良いと思います(その際は4〜6号がオススメ)。

それぞれの筆の具体的な使い心地とかは、そのうち個別にエントリを上げられたら良いかなと思っております(思うだけで終わらないようにはしたいです…)

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