普段は混色スペースを拭き取る程度で、後はそのままにしてしまいがちな透明水彩のパレット。もちろんそのまま使い続けてもいいのですが、1年に1回は総点検も兼ねてキレイにしよう! というお話です。
使っていくうちにどうしても不満が出てくる
あれこれ考えて納得した上でパレットに絵具を出したものの、結局使わなかった色が出てきたり、その間に新しい絵具を買ったりするとどうしてもパレットに入れたくなる…等、使っていくうちに不満点が出てきたり、ひび割れが進行して絵具が溶けにくくなってきたりして、1年を迎える頃には使いづらくなってきます。
混色スペースもまた然りで、使っていくうちに色が混ざりすぎて濁ってしまったり。これを「秘伝のタレ」と呼ぶ人もいますが、色が濁りすぎると想定外の事態になりがちなので、放置しすぎるのもよろしくないです。前述の通り、混色スペースは月イチで一度綺麗にしますが、やはりどこかのタイミングで、メンテナンスを兼ねてパレットを一度リセットした方が精神衛生上良いかと思いまして、年末にパレットの掃除と絵具の入れ替えをしました。
ちなみに自分がパレットを作る時のお手本にしたのがこちらです↓ (仕切りに入れる色の並べ方なども)
2022年のパレットを振り返ってみる
2022年12月末時点でのパレットの状態がこちら。
…うん、これは見るに堪えないw
入れていた色は当初このような構成だったのですが、後にW&Nの選抜18色を紹介した記事を書いたことにより、一部色を入れ替えました。半年もしないうちに既に不満点が出来ていたという…
入れ替えは以下の通り。
- パーマネントモーヴ → パーマネントマゼンタ
- ウィンザーオレンジ(レッドシェード) → ライトレッド
パーマネントモーヴは、大きい方のパレットに入れているホルベインのミネラルバイオレットに似た色が欲しくて入れていたのですが、粒状色かつ溶かしにくい色だったのでだんだん使わなくなり、後に前述の記事で紹介したパーマネントマゼンタがとても使いやすかったこともあり、こちらに入れ替えました。
ウィンザーオレンジは隣のスカーレットレーキと色相的に被りやすい色だったので、同じく前述記事で肌の色として使いやすかったライトレッドと入れ替えるに至りました。
イエローオーカーが万能すぎて他の黄色が減らない問題
色味的には黄土色のポジションに入る色ですが、落ち着いた色味の黄色としても使えるので、Inktoberをやっていた時にゴリゴリ減りました。2022年のInktoberはFFシリーズ縛りでやったのですが、金髪や黄色系の衣服を身に着けているキャラを描いた時にめちゃくちゃ大活躍していた色でした。
この画像のセリスは、金髪と衣服はほぼイエローオーカーのみで塗ってます(濃い部分は別の色)。画像じゃちょっと落ち着いた色になっていますが、実物はもう少し明るく発色してます。
黄色はイエローオーカー含めて4色入れていたのですが、イエローオーカー以外の黄色があまり減らなかったです…。パーマネントガンボージは色の幅があまり広くなかったのでほとんど減らず。またウィンザーレモンに至っては混色で使う以外は持て余していた状態だったので、2023年のパレットでは入れるのを一旦やめました。
出番のない色があった
これとは逆に、あまり出番のなかった色が
- ウィンザーレッド
- キャプトモータムバイオレット
- ターコイズブルー
- ペールウィステリア
でした。特にウィンザーレッドとキャプトモータムバイオレット、マジで使ってなかった。何故入れた…?
ペールウィステリアとターコイズブルーも入れたものの、あまり使わなかったので、こちらも別の色にしようと。特にターコイズブルーは粒状感がちょっと目立つ色だったので、もう少し粒子が主張しない水色がいいなと…
ペインズグレーがないのは割と不便だった
上記のW&N全色紹介記事や、前述のW&Nの選抜18色の記事で「ペイニーズグレーとニュートラルティントはどちらか1つあればいい」って書いてるんですが、実際の自分の作業工程に照らし合わせるとペインズグレーが必要だったケースが割と多かったのでした。しかし絵によってはニュートラルチントが必要な場合もあったし、どちらか片方には絞れない…そしてインディゴも外せない…というジレンマに陥りました。
記事ではどちらか片方のみと書いているにも関わらず、自分のパレットには両方とも入れるという矛盾が生まれるのはどうなのよ…となったものの、パレットを1枚で完結させるために結局両方とも入れることにしました…。
プルシャングリーンとフタロターコイズ、どちらか片方でええやん問題
顔料構成の全く違う色なのでほぼ似た色味というわけではないのですが、薄く塗った場合だと色相的にあまり差がなかったので、「両方入れた意味とは…?」となる局面が多かったです。というわけで、減りの少なかったフタロターコイズを外してプルシャングリーンのみにしました。
パレットに出す絵の具の量が全体的に多かった
ほぼほぼ使い切り寸前まで減ったイエローオーカーを除いて、全体的に絵の具の減りが鈍く感じたのです。描く量に対して絵の具の量が比例していなかったので、単純にパレットに出す絵の具の量が多すぎたのかもしれません。なので、描く量が多かろうが少なかろうが、なみなみに出すのはやめようと思いました…。
2023年のパレットの色構成を考える
パレットを洗う前に、次に採用する色を選抜。
捨て色が多かったので、今度は捨て色をなるべく無くそうとして真面目に考えてました…が、これを作ってた時にちょうど水星の魔女を観ていたので、そっちに気を取られて茶系の色を一部間違えてしまっているという。
どうしても入れたかった色
2023年のパレットには、どうしても入れたかった色がありました。
ポッツォーリアース(マイメリ)
こちらの記事で紹介している、薄めるとピンクベースな肌の色としても使える色。
顔料的にはW&Nのライトレッドと同じ(PR102)なので、役割がダダ被りする色でもあります。ただ、同じ顔料名とはいえそれぞれ原料が違うので、塗ってみると色味に差があります。W&Nのライトレッドがくすみオレンジとしても使えそうな色味であるのに対し、こちらはくすみピンクとしても使える色味です。
ベルチーノバイオレット(マイメリ)
オペラの代わりとしても使えるPR122の絵の具で、一般的にはキナクリドンマゼンタと呼ばれる色です。サブパレットにしか入れていなかったのですが、今年はメインパレットにも入れる事にしました。元々ホルベインのキナクリドンマゼンタを持っていたのですが、サブパレットに充填した時点で切れたので、別メーカーを試してみたかったというのがあり。
当初はW&Nで買おうとしていたのですが、薄く塗っても色味がボケないかつ凝集感のないものが良かったので、思い切ってマイメリにしてみました。セヌリエのヘリオスパープルとも迷いましたが、高温超多湿の夏の北陸だとパレット内で溶けて大惨事になりそうだな…と思ったので、今回は見送りました。
ホルベインのアーチストパンカラーも良かったんですが、1年で半分も使いきれる自信がなかった…
スピナルブラウン(シュミンケ)
イエローオーカーよりも黄みが少なめで、しかしバーントシェンナやライトレッドよりは赤みが少なく、なおかつバーントアンバーよりも明るめの茶色…っていうものを自分の絵に使ってみたらどうなる?
…というほぼほぼ興味本位だけで入れてみたかった色(お前…)。レトロに見せたい絵の下塗りとかに使えそう。
セピア(マイメリ)
茶色の選択肢を増やしたいなと思って。セピアはホルベインやターナーでも所持しているのですが、今回は構成顔料に黒が入らないこちらをチョイス。W&Nの砂漠カラー(限定色)にあったダークブラウンに近いらしい。
実はハーフパンの方を先に買って使ってました(買おうとした時にチューブが欠品だったのでハーフパンで買った)が、とても良かったのでチューブも確保。満を持してメインパレットに入れられる算段が出来たので入れた次第。
ホルベインを積極的に入れる
実は2022年のパレット構成はほぼW&Nとターナーオンリー(1色だけシュミンケ)という構成で、大きい方のパレットには多めに入れていることもあって、ホルベインやクサカベを全く入れない構成にしたのでした。が、ホルベインには使いやすく調整されている色も多い(あと乾燥しても割れにくい)ので、今年は積極的に入れることに。
特にサップグリーンに関しては、ホルベインやクサカベの方がよりコミック向きの彩度だと思うんですよね。W&Nやターナーも良い色味なんですが、コミック系イラストに使うには気持ち色が渋いかなと思うなどしました…。
入れる色を決めたらパレットを洗おう
大体入れる色が決まったところでパレットを綺麗にします。
残っている絵の具をこそぎ取って、まず熱湯をかけて筆で溶かせる範囲まで溶かしてしまいます。
この状態でもあらかた取れているのですが、細かいところまでは取れていないので、ここから更に綺麗にしていきます。消しゴムで取っても良いのですが、消しカスが残る場合もあるので、重曹クリーナーを付けたメラニンスポンジと使い終わった歯ブラシでこすり取って、その後水洗いしました。
今回は重曹リムーバーで落としましたが、ネイルリムーバーでも結構綺麗に落ちます。
重曹は本来アルミ製品には使えないので、試される場合は自己責任でお願いします…! ネイルリムーバーも用途外になる(最悪光沢部分が剥げますしプラスチック製には使えません)ので、目立たない所で試してからの方が良いです。また実際に使う場合には、念の為アセトンフリータイプの方が良いです。
完全にとまではいかないですが、綺麗になりました…!
あーでもないこーでもないと言いつつ、入れる色を決めました。去年と比べてシュミンケが増えたのと、でっかいチューブもちょっと増えましたね。パレットが小さいのでめちゃくちゃ窮屈w
配置を決めたら、パレットに絵の具を出していきます。割れ防止のためにアラビアゴムメディウムを数滴垂らし、仕切りの中で混ぜ混ぜしながら使いやすい形に整えます。全色出し終えたら、パレットを開いたまま上から新聞紙などで覆います(※ホコリなどの付着防止)。その状態で1週間ほど乾燥させたら完成!
パレットに入れた色はこれだ!
パレットが出来たら色見本もセットで作ります。実はこの色見本を作る時が一番緊張しますw(必ず3色は塗りに失敗しちゃうので…)以下、入れた色を簡単にご紹介。
黄(3色)
- イエローオーカー(W&N)
- キナクリドンゴールド(ホルベイン)
- カドミウムフリーイエローペール(W&N)
イエローオーカーは使う顔料の違いはあるけど、色味的には変わらない(強いて言えば透明度がほんの少し違うかな程度)ので、どこのメーカーでも大体使い方は同じです。去年はターナーでしたが今年はW&Nを採用。
カドミウムフリーイエローは私がカドミウム色を避けているのでこのチョイスなのですが、気にならなければ普通にカドミウムイエローペールを入れてもよいかなと。それ以外ならイミダゾロンイエロー(ホルベイン)とかウィンザーイエロー(W&N)あたりが選択肢になるかと思います。
キナクリドンゴールドはホルベイン水彩総選挙の常連色ですね。ニューガンボージよりもちょっと赤みが足されているので、この手の黄色が苦手な方におすすめ。
緑(4色)
- オリーブグリーン(W&N)
- サップグリーン(ホルベイン)
- ウィンザーグリーン ブルーシェード(W&N)
- プルシャングリーン(シュミンケ)
去年はウィンザーグリーンはイエローシェードを入れていたのですが、フタロターコイズを外した事により青緑の選択肢が減るので、今年はブルーシェードに変更。そしてサップグリーンをターナーからホルベインに変更。
残りの2色は去年と同じものを続投。
青・紫(6色)
- マンガニーズブルー ノーバ(ホルベイン)
- ウィンザーブルー グリーンシェード(W&N)
- アントワープブルー(W&N)
- ウルトラマリン(ターナー)
- デルフトブルー(シュミンケ)
- ウィンザーバイオレット ディオキサジン(W&N)
デルフトブルーはずっと前から欲しかった色で、シュミンケ値上げのタイミングでギリギリ買うことが出来たので、念願のメインパレット入りです…! 中身はインダンスレンブルーという色で、既にホルベインとW&Nとターナーで持っているのですが(なんならターナーは2本ある…)、この色は格別。人気色なのも頷けます。
水色はターコイズブルーの取り扱いに困って全く使わなかったので、粒子の細かいマンガニーズブルーノーバを採用。そしてウィンザーブルーもレッドシェードからグリーンシェードに変更。
それ以外は去年から続投。ウィンザーバイオレットの位置を青系と一緒にしたぐらい。
赤(5色)
- ペリレーンバイオレット(W&N)
- ベルチーノバイオレット(マイメリ)
- ローズレッド(ターナー)
- ブラウンマダー(ターナー)
- パーマネントスカーレット(ターナー)
ターナーのローズレッドはW&Nやシュミンケでいうパーマネントカーマインの色です。同じ顔料(PV19)だけど、色の深さが違うものになります。因みに国内メーカーでこの色味を取り扱っているのはターナーだけです。
ベルチーノバイオレットを新しく入れた以外は続投です。ブラウンマダーは去年茶色のカテゴリーに入れていた色ですが、結局赤として使うことが多かったので、今年は赤のカテゴリーに移動。
茶(5色)
- ライトレッド(W&N)
- ポッツォーリアース(マイメリ)
- スピナルブラウン(シュミンケ)
- バーントアンバー(シュミンケ)
- セピア(マイメリ)
シュミンケのバーントアンバーは先にハーフパンに入れて使っていたのですが、固めても割れる気配がなかったのでメインで使うことに。去年入れていたW&Nはしょっちゅうパレットから剥離していた…
その他の色は先にピックアップしたのでここでは割愛します。
グレー・黒系(3色)
- インディゴ(ターナー)
- ペイニーズグレー(W&N)
- ニュートラルチント(シュミンケ)
インディゴとペイニーズグレーについては先述したので割愛。ニュートラルチントは去年入れていたターナーの色味も好きだったんですが、今年はシュミンケにしました。ターナーやホルベインとはまた違う色味なの面白い。
おわりに
というわけで去年のパレットの振り返りから今年のパレットの色紹介までお話してみました。長かった…
この記事、本当ならば新年最初にお出しする予定だったんですが、急遽「ストラスモアの代替になるような紙を探そう」といった趣旨の記事(↓)を先に書いてしまったので、だいぶ延びてしまいました…
今年は去年のペールウィステリアや、サブパレットには入っているラベンダー・ライラックといった中間色にはなるべく頼らないスタンスで行こうと思っております。きっとどこかで中間色に頼らないことによる限界点は見えてくる気もするんですが、やれるところまでやってみたいです。透明水彩をうまく使いこなす練習でもあるので…!