絵の具関係の記事がここのところW&Nの透明水彩ネタで連続しているのですが、今回もW&Nです…。
以前この記事で個人的オススメ色について触れたのですが、今回はここから更にピックアップ色を絞り込んで、個人的に最強の色組セットを作ろうという話になっています。なるべく水彩初心者向けには書いたつもりですが、マニアックすぎるかもしれない気もしてます…
この記事を書くに至ったきっかけ
2022年6月より20%値上げになりました
海外ブランドの中でも最も手にしやすいため愛用者も多い、W&Nのプロフェッショナル透明水彩(PWC)。そのW&NのPWCが今年の6月から値上げになってます。それでも海外メーカーでは安い方。
そんな中、値上げ前に駆け込み購入を考えていた人たちが参考にしていたのが、twitterのタグ「#winsornewtonの推し色を5色挙げる」です。私も先人たちに倣って推し色を5色挙げました(そしてタグを参考に買い足しました)。
値上げした今、セット品を買うのは微妙かも…
さてそんなW&Nのプロフェッショナル透明水彩ですが、そのセット品はどうなのかというと…セットによっては組み込みされている色のクセがやや強いです…。
ホルベインのセットも大概ですがW&Nもなかなかクセがすごい。18色セットは白と黒以外の色も最低2色は揃えているので、一見使いやすそうにも見えるのですが、粒子の荒いセルリアンブルーとローアンバーは初心者にはちょっと扱いにくいのでは…? という気がしました(実際自分もパレットに入れるのは避けた)。また24色セット以上はカドミウムやコバルトを使った色が増えてくるので、特に化学物質過敏症の人がセット品を購入するのはおすすめしません。
そこで、前述の推し色タグを参考にしつつ、水彩初心者でも扱いやすい「クセの少ない18色セット」を考えてみようかと。要するに「ぼくのかんがえたさいきょうのえのぐセット」を作ろう! …ってわけです。ホルベインでは見かけるけど、W&Nでは見ないな…? と思ったので。しかしホルベインどころかW&Nの入門用であるコットマンすら通らずに、いきなりW&Nプロフェッショナルで水彩デビューする人は流石にいないか…(コットマンについては後述)。
ちなみにホルベイン12色の場合は下記が一番参考になります。顔料の知識があれば他でも応用可能かと。
趣旨はわかったけどなぜ18色?
W&Nで比較的使いやすい色が入った12色セットなら、もう既に別パッケージであるからです。
事ある毎にご紹介しているメタルボックス トラベルセットが、捨て色がほとんどなくて個人的には最強の色組。ウルトラマリンが粒子の粗い方が入っていたり、緑がサップグリーンのみしかない所に目を瞑れば、白と黒も入ってないのでとても良いセットです(パレットがある分高いのがネック)。なおハーフパンの方はチューブ版には入っているパーマネントローズが無く、代わりにアイボリーブラックが入っているので、買うならチューブ版がおすすめ。
あと12色だと混色が大前提になってしまうので、初心者の場合はあまり混色しないで済むように、色の選択肢がもう少しあってもいいかなと思います。でも24色だとちょっと多いので、間を取って18色で考えてみようと。
選定基準を決める
ただ闇雲に推し色を選ぶだけだとものすごく偏ってしまうので、以下のように選定基準を定めました。
毒性注意色は入れない
写真のように「警告シール」が貼られている色のこと。主にカドミウムやコバルトといった重金属系の顔料を使った色は、発色に優れているのですが有毒です。普通に絵の具として使う分には問題ないとの事なのですが、我が家には猫がいるため、これらを使う事ができません。また私自身もアトピー肌で、夏でも手に掻き壊しができる事もあるため、リスク回避も兼ねて買わないようにしています。…あとおやつとカフェオレがないと作業出来ない。
シリーズ4に入っている色はなるべく選ばない
このシリーズに入る色の大半がグラニュレーション色だったり、カドミウム・コバルト使用色だったりするからなのと、単純に単価が高い(5mlチューブで990円)ので、初心者が買うのには躊躇しやすいからです。ただ完全に選択肢から外すのには無理があるので、初心者でも塗りやすい色とカドミウムフリー色のみに限定。
グラニュレーション色はなるべく選ばない
上記記事のリンクから行けるPDFの中で、G/Stの項目に「G」表記があるものは、粒状感の特性がある「グラニュレーション色」と呼ばれるものです。この色は「St」表記のある色(※ステイニング色: 染み付きの強い色)と混色すると色が分離します。分離色を作るのには便利ですが、そうでないなら少々扱いにくいかなと。ちなみに、前述の推し色タグで挙げている人が多かった色にポーターズピンクがありますが、この色はG色の中でも特に粒状感が強く、また溶けにくくムラになる色なので、W&Nの中でも特にクセが強い色です。
以上3点のルールを決めて、手持ちの色とドットカードとにらめっこしつつ選んでみました。なお、ステイニング色や不透明色を避ける縛りまで入れてしまうとマジで選択肢が減るので、この2つは無視します。
選んでみた結果がこちらだよ!
これらを踏まえて、18色選んでみたらこうなりました。
前述の推し色タグでは見なかった色もいくつかありますが、全体の2/3は推し色タグで挙げられた色で固めてます。出来るだけ元原の色に近くなる様に補正はしましたが、完全再現には至らず。orz 特にウィンザーグリーンYS、実物と色味がかなり違う事になってます…。
価格について
色名の横に「S1」とか「S2」といった感じでシリーズ番号を記載しているのですが、なぜ記載したかというとシリーズによって価格が違うからです。メーカーによってはシリーズAとかシリーズCといった表記になっていますが、こちらも同様にランクによって価格が違います。
W&Nの場合は数字が大きいほど価格が上がり、またチューブかパンタイプかでも価格が変わるので、価格表を用意しました。価格はメーカー希望小売価格なので、ここから更に2割引で販売されている店もあります(中には3割引で販売している所も)。購入時の参考にして頂けると幸いです。
シリーズ/サイズ | 5mlチューブ | 14mlチューブ | ハーフパン | ホールパン |
---|---|---|---|---|
S1 | 583円 | 1540円 | 594円 | 1111円 |
S2 | 660円 | 1749円 | 682円 | 1276円 |
S3 | 704円 | 1815円 | 693円 | 1298円 |
S4 | 990円 | 2442円 | 770円 | 1452円 |
黄
ウィンザーレモン [S1]
公式の3原色イエロー。
基本のセットだとウィンザーイエローの方が入っていて、耐光度もあちらの方がやや上ですが、後述する残りのイエローが赤みの入っているものになるので、ニュートラルなこちらを選んでみました。
カドミウムフリーイエローペール [S4]
安全な顔料を使って本物のカドミウム使用色に近い色味を再現した「カドミウムフリー」シリーズのひとつ。
発色が強く、不透明色。カドミウムフリー色は透明水彩の教本でカドミウム使用色が使われている場合、その代用としても使えるので、カドミウムの毒性が気になって手を出せなかった人におすすめ。個人的にはペールが一番扱いやすいと思うのですが、もう少し暖かみのある方が良ければカドミウムフリーイエローやネイプルスイエローディープもおすすめ。後者はシリーズ1なのでちょっとコストが下がります。
W&Nの日本公式Twitterの中の人が「カドミウムフリー色は日本ではまだまだ日の目を見ない」とお嘆きだったので、皆もカドミウムフリー色を使って応援しようぜ…!
ニューガンボージ [S1]
実は初めて買ったW&Nの絵の具がコレだったのです。基本のセットにも入っている色。
水の量だけで数種類の黄色のバリエーションが作れる万能イエロー。多少彩度が高くなってしまうものの、コレ1本あれば金髪キャラが塗れてしまう。トランスペアレントイエローも似た様な使い方が出来るのですが、ニューガンボージの方がやや赤味があるので個人的にはこちらの方が使いやすいと思います。
赤・ピンク
スカーレットレーキ [S2]
私の推し色その1。18色セットにも入っている色。
PR188という顔料で作られた単一顔料色なのですが、この価格帯ではこの顔料を使った色を販売しているメーカーはターナーしかないです。それ以外だとセヌリエ・シュミンケ・ダニエルスミスで取り扱いがありますがちょっとお高め。そういう意味でも、W&Nのスカーレットレーキやターナーのパーマネントスカーレットは、高価格帯でしか見かけない色を低コストで買える分お得。特にターナーは15mlチューブで買っても激安(429円)でコスパ最強。
水少なめで塗ると朱色、水多めに塗ると可愛いサーモンピンクになります。薄く塗って肌の血色を出すのにも良いです。ウィンザーレッド(真っ赤)とも迷いましたが、実際自分のパレットではこっちの方が割と出番が多い。ステイニング色なので、肌の赤みに使う時は絵の具や水の量に注意。
これと似た色で、推し色タグで一番人気だったローズドーレがあるのですが、オックスゴールをもってしても溶かしにくく塗りにくい色は流石に初心者向けではないな…という気がしたので今回は選択から外しました。
パーマネントローズ [S3]
公式の3原色マゼンタ。推し色その2。
濃く塗ればほんの少し紫っぽい色味もある赤、薄く塗ると鮮やかなピンク色になる万能マゼンタ。色の深みはあまりないけど、薄めても彩度があまり下がらないので、赤・ピンク系の中でも扱いやすいと思います。
なお、パーマネントローズの隣に並んでいるパーマネントカーマインという色は、耐光性こそやや下がるものの、パーマネントローズとほぼ同じ様な使い方ができます。落ち着いた色味のピンクで、濃く塗るとパーマネントローズよりもやや深みのある赤になります。絵柄によってはこちらの方がしっくり来る場合もあるので、まずドットカードで試してみて、お好きな方を買うと良いです。
パーマネントマゼンタ [S3]
推し色タグでコットマンのパープルレーキを挙げている人が結構いたので、同じ顔料・ほぼ同じ色味のこちらを入れてみました。濃く塗れば赤紫になり、薄く塗るとほんのり青っぽい色味を帯びた紫になります。水の割合を多めにして、薄紫として下塗りや肌の影に使うのも良いかも。
あまり紫が強くない方が良い場合はキナクリドンマゼンタの方がオススメ。
紫
ペリレーンバイオレット [S2]
推し色その3。
茶色系統に分類されていますが、茶色として使うだけでなく暗赤色・暗紫色としても使えます。小さい方のパレットに入れていますが、なんだかんだと使う機会が多くて結構減りも早いです。ペイニーズグレーとスカーレットレーキの混色でもこれに近い色味を作れるのですが、これ単色で持っていた方が便利。赤や紫の影色に使うといい感じ。
ウィンザーバイオレット(ディオキサジン)[S1]
基本の紫。混色できれいな紫を作るのは非常に難しいので、あった方が良いと思います。
ホルベインでいうとパーマネントバイオレットなのですが、全く違う色じゃね…? と言わんばかりに色が濃い。用途によってパーマネントバイオレットと使い分けるのも良いかもしれません。
ちなみに上の写真は水の量が多すぎて想定外に薄くなってしまったので重ね塗りしてます…
青
インダンスレンブルー [S3]
いわゆる紺色。青系の中では赤寄りの色ですが、ターナーの同色と比較すると比較的青みが強め。ホルベインのロイヤルブルーと似た様な色味(比較してもほとんど差がわかりにくいレベル)。落ち着いた色味の渋い青なので、影色としてもよし、薄くしてブルーグレーとしても。
実際推し色タグ見てるとインダンスレンブルーよりもインディゴやアントワープブルーの方が挙げてる人が多かったのですが、インディゴはペイニーズグレーを入れるなら役割が被る事が多いかなと思ったので除外。ペイニーズグレーではなく、ニュートラルティントを入れるならインディゴでも問題なし。
一方、アントワープブルーは染み付かないタイプのプルシアンブルーでとても使いやすい色なのですが、普通に塗ると思ったように濃度が出ません。薄く塗ってもそれなりに濃い青になり、かつ染み付きもしにくい彩度控えめの青なら、インダンスレンブルーの方が使い勝手は良いかと思ったので、推し色なのですが泣く泣く外しました…
因みにもっと赤寄りがいいのであればシュミンケのデルフトブルーが良いと思います。高いけど…
ウルトラマリン(グリーンシェード)[S2]
こちらは青紫。
推し色タグの方では粒子の荒いフレンチウルトラマリンを推す人が多くて、こちらを推している人を殆ど見かけなかったのですが、私は粒子の粗くないこちらを推します。基本的にウルトラマリンは粒子が荒く、混色すると分離しがちで使うのが難しいのですが、こちらは粒子が細かいので扱いやすいです。
色味は、フレンチウルトラマリンはやや赤味を帯びた青紫なのに対し、こちらはグリーンシェードという名の通り、緑がかった青紫なのが特徴。色の濃さもグリーンシェードの方が濃い目。
…ただ正直ぶっちゃけますと、最推しのウルトラマリンはターナーの方です。W&Nよりも粒子が細かいのに、15mlチューブで買っても500円でお釣りが来る。なんとウルトラマリンGSを1本買うよりも安いという…
ウィンザーブルー(グリーンシェード) [S1]
プリンターのシアンの色。ホルベインでいうとフタロブルー イエローシェードのこと。
基本のセットにも入っている色ですが、公式の3原色ブルーは赤みのあるウィンザーブルー(レッドシェード)の方になります。が、混色すると鮮やかな色調になるのはこちらのグリーンシェードの方。薄めると水色としても使えるので、個人的にはこちらを推します。
緑
ウィンザーグリーン(イエローシェード)[S1]
ホルベインでいう所のバンブーグリーン。基本のセットにも入っている黄味の入った緑。…なのですが、上の画像は色補正がうまく行かなくて、イエローシェードではなくブルーシェードの色味になってしまってます…orz
ウィンザーグリーンにはこれに加えて、青味がかった色のウィンザーグリーン(ブルーシェード)もあります。この色はホルベインでいうビリジャンヒューなのですが、混色前提の色なのでなかなか減らなかった記憶が。イエローシェードにしてもそのままで使うのは難しく、やはり混色前提で使う色になります。
どちらを入れても使い方は同じなのですが、イエローシェードの方は混色すると気持ち落ち着いた色味になるので、風景画を描く人の場合はこちらの方が良いかもしれません。
パーマネントサップグリーン [S1]
単色で使う基本の緑としては超ド定番の色。基本のセットにも入ってます。
ほどほどに抑えられた彩度と色の濃さで扱いやすい緑。風景画やボタニカルアートを描く人はほぼ必須なんじゃないか、というレベルで植物を塗るのに適した色です。薄く塗ると渋めの黄緑として使えます。もう少し緑寄りの方が良いならフーカスグリーンがおすすめ。
サップグリーンとフーカスグリーンはどちらか片方でよいという話ですが、ウィンザーグリーンが使いにくいという人はこれをフーカスグリーンに置き換えても良いのかも。役割被りそうですが…
オリーブグリーン [S1]
サップグリーンよりも更に彩度を低くした黄緑。こちらも基本のセットに入ってます。
W&Nのものはかなり彩度が低いので、個人的にはホルベインの方が色味が好きなのですが、植物を塗る場合はW&Nの方が自然な色合いになります。そのまま単色でも使えるほか、混色して彩度を落とすのにも使えます。
ペリレーングリーンの方が良かったかな…とも思ったのですが、あちらはかなり色味が濃くて、黒の代わりとしても使えるような色なので、ペリレーンバイオレットみたいな使い方を想定して入れるには少々扱いが難しいかな…と。あれば便利なのは分かってるのですが…
茶・グレー
イエローオーカー [S1]
基本の黄土色で、全てのセット品に入っている定番色。
黄土色として使うのもいいのですが、薄く塗って彩度の低い黄色やクリーム色としても使えるので、下塗りにも使える万能色。混色すると落ち着いた色味にしてくれる働きも持った色ですが、そこまでくすんだ色にはなりません。マゼンタ系と混色すると優しいオレンジ色が作れるので、個人的にはオススメの組み合わせ。
ライトレッド [S1]
やや明るめの赤茶色。基本の赤茶色はバーントシェンナやベネチアンレッドだと思うのですが、バーントシェンナよりも赤寄りで、ベネチアンレッドよりも明るめのこちらを選んでみました。
実はこの色を持っていなくて、今回推し色タグで「肌にも使える」というレビューを見たのがきっかけで買った色。薄めて塗ると肌色として使えます。
バーントアンバー [S1]
基本の茶色でド定番色のはずなんですが、何故か基本の12色・18色セットには入っていない。茶色は混色で作るのは難しいので、持ってた方がいい色。赤みの少ない方が良いならバンダイクブラウンがおすすめ。
バーントアンバーも、色味が好きなのは実はクサカベの方だったりします。W&Nのバーントアンバーは複合顔料で、赤と黄系の顔料が入っているためかちょっと明るめに色が出ます(クサカベは単一顔料)。更に言うと本命はシュミンケの方なのですが、未だに買えていない…
ペイニーズグレー [S1]
黒の代わりとして使える色の筆頭。推し色タグでもかなりの方が推し色に挙げていました。
ホルベインのペインズグレーと比べて気持ち青みのあるグレー。これにインダンスレンブルーなどで少し青みを足すとインディゴの代わりとして使う事もできます。暗色を作りたいときのベース色としても便利で、サップグリーンやオリーブグリーンとの混色ではペリレーングリーンに似た色が作れます。またスカーレットレーキと混色すると、粒状化しないキャプトモータムバイオレットっぽい色も作れたりしますよ。
なお青味のないものが良い場合はニュートラルティントが選択肢になります。ちなみにインディゴを入れる場合、ペイニーズグレーだと役割が被りやすいので、この場合はニュートラルティントの方がおすすめ。
あれ? 定番のあの色は…?
18色全部紹介しましたが、おそらく「なんであの色入れないの?」っていうツッコミは確実に来るでしょう。というわけで、18色に入れなかった色でおそらくド定番であろうものについてちょっと触れておきます。
オペラ
蛍光顔料を使ったピンクのこと。ウィンザーグリーンと同様に混色が大前提となる色で、W&Nではオペラローズという名称で販売されています。混色だけでなく絵全体の彩度上げなどにも使う人も多く、人によっては超ヘビロテ色だったりするのですが、オペラ共通の欠点として光に弱い事と、スキャナや印刷ではその通りの色を再現するのが非常に難しい事が挙げられます。後者はオペラに限らず蛍光色共通の弱点でもあります。
耐光性に関しては透明水彩クラスタさんがよく実験していらっしゃいますが、だいたい2週間位で色が変わってしまう模様。個人で楽しんだり、描いた後にスキャンしてデータ化する場合には問題ありませんが、展示目的で描くのであれば使うのは避けた方が良いです。こういった理由からオペラは入れませんでした。
どうしてもオペラ要素が欲しい…という場合は、オペラよりも彩度がかなり落ちてしまいますが、キナクリドンマゼンタをおすすめします。そのキナクリドンマゼンタも上記18色には入れてませんが…
水色
W&Nの水色はセルリアンブルー・セルリアンブルー(レッドシェード)・マンガニーズブルーヒューになるのですが、残念ながらいずれもグラニュレーション色になります。マンガニーズブルーヒューが最も粒状感が弱い方で、薄く塗る分にはほとんど気にならないレベルなのですが、濃く塗るとやはり粒状感が出ます。
紙の目が荒くなければさほど目立たないのですが、気にする人はいそうだと思ったので今回は外しました。あとウィンザーブルーGSを水多めで使えばそこそこ鮮やかな水色にはなるので、それでも事足りるかなと思いまして。
それでも粒状化しにくい水色を入れるのであれば、個人的には
- マンガニーズブルー ノーバ(ホルベイン)
- ホリゾンブルー(ホルベイン)
- セルリアンブルーヒュー(W&Nコットマン)
- スカイブルー(クサカベ)
- ブルーコンポーゼ(クサカベ)
あたりを推します。なおターナーのターコイズブルーも(粒子が荒いのですが…)スッキリとした色味の水色で、こちらもおすすめです。ただ人気色なので5mlチューブがよく欠品してますが…
オレンジ
これも入れるかどうか非常に悩んだのですが、彩度や透明感は多少なくなるものの混色でも作れるので、そこまで優先度は高くないかなと思いまして。あと他の色とのバランスも取りたかったので、オレンジは敢えて外しました。自分のパレットにもオレンジは入っているけど、実はそこまで出番がなかったり…
基本のセットにはウィンザーオレンジ(レッドシェード)が入っていますが、敢えて入れるとしたら、ニュートラルな色味のウィンザーオレンジか、赤味強めで透明度の高いトランスペアレントオレンジを選ぶかな。でもレッドシェードもそんなに悪くない色味ではあるので悩ましい。
選抜18色で塗ってみた
というわけで選抜メンバーだけで色塗りしてみました。
1枚目
ただ塗るだけでは検証にならないので、ほぼ全てのパーツで必ず2色以上の混色が必要になる題材を選んだ…つもりだったのですが、いざ塗り始めてみたらそこまで混色に苦労しなかったというオチです。しかも実質12色くらいしか使ってないことに塗り終わった段階で気づくという。
それでも本来ならペリレーングリーンやインディゴ、それぞれ単色のみで塗れるパーツを、混色で限りなく近い色味で塗る事はできたので、混色のレパートリーが増えただけでもある程度収穫は得られたかなと思います。18色でやってるので12色でやるよりも難易度は遥かに低いんですがw
あと、「あまり出番ないかもしれない…」と思っていたパーマネントマゼンタがめちゃくちゃ大活躍してくれました。普段デジタルで描く時、影を乗算レイヤーに紫系で塗って下のレイヤーに重ねるのですが、それと同じ事をしてみたら結構いい感じにハマってくれまして。小さい方のパレットに入っているパーマネントモーヴをパーマネントマゼンタに入れ替えてしまいたい位、お気に入りの色になりました。同じく初めて肌色として使ったライトレッドも、かなり汎用性の高い色であるとわかったので、こちらもレギュラー入りさせたいですなあ。
2枚目
上の絵では結局12色位しか使わなかったので、今度はほぼ全色使う機会がある題材を選んでリベンジしてみました。
先に描いた絵では特にペリレーンバイオレットやバーントアンバーといった茶系の出番がまるでなかったので、否が応でも使わざるを得ない褐色肌やちょっと肌の色素が濃い目なキャラで…と考えてたら、「そういやディシディアにまさにうってつけな奴いるじゃん」とふと思い出しまして題材に選んでみました。当初の思惑通り、ほぼすべての色に満遍なく出番があったので、リベンジには成功…していると思いたい。
1枚目・2枚目ともに主線はリキテックスリキッドで描いてます。この話は以前の記事で書いてますので、「ちょっと興味あるね!」っていう方はこちらも是非。
おまけ: コットマンで揃えたい場合は?
ここまで紹介してきたのは「プロフェッショナル・ウォーターカラー」のものですが、では「コットマン・ウォーターカラーで揃えたい場合はどうしたら良いの?」というケースにもちょっとだけ触れておきます。
というのも、ちょうどW&Nの日本公式ツイッターでコットマンの紹介ツイートをスレッドに追加の形でやっているので、気になっている方もいるのではないかと。
いきなりプロフェッショナル・ウォーターカラーは予算的にも厳しい…という方はコットマンも良いです。他のブランドとは違い、どの色を買おうが均一価格なので安いですし、チューブは8mlサイズなのでコスパも良いです。プロフェッショナル・ウォーターカラーと組み合わせて使うこともできますので、コットマンにはない色をプロフェッショナル・ウォーターカラーで揃えるのも手。ただカラーチャートで見た限りだと茶色の不透明色が若干多いのがちょっと気になるかな…
というわけで独断と偏見によってコットマン縛りでチョイスしてみたリストがこちら。↓
- レモンイエローヒュー
- カドミウムイエローペールヒュー
- カドミウムオレンジヒュー
- パーマネントローズ
- ローズマダーヒュー
- パープルレーキ
- ディオキサジンバイオレット
- セルリアンブルーヒュー
- インテンスブルー
- プルシャンブルー
- ビリジャンヒュー(またはインテンスグリーン)
- サップグリーン
- イエローオーカー
- バーントシェンナ
- ライトレッド
- バーントアンバー
- バンダイクブラウン
- ペイニーズグレー
コットマンの場合はもともとの色数が少ない(全40色)のと、暗色系(特にペリレーン系)があまりないので、プロフェッショナルとはだいぶ異なるラインナップになります。こちらでは、プロフェッショナルの方では選ばなかった水色やオレンジも入れています。なお、オペラはコットマンのラインナップにはないので、もしオペラをW&Nで揃えるのであれば、プロフェッショナルのオペラローズを買う必要があります。メーカーに拘らないならホルベインのオペラがおすすめです。
黄色と緑が1色ずつ少ない分を茶色に割り当てて、赤茶色と茶色が2色ずつになるような構成にしていますが、そんなに茶色いらねぇよ!ってな場合は1色削ってターコイズやガンボージヒューとかにしても良さそう。
プルシャンブルーは、コットマンのラインナップにはないインダンスレンブルーの代わりとして入れています。
ところで上記ツイートによると、かつてプルシャンブルーはウルトラマリンの代替品として使われた歴史があるそうですが、コバルトブルーヒューならともかく、プルシャンブルーをウルトラマリンの代わりとして使うには色相的にやや無理があるかなと…。
というわけで、ウルトラマリンは素直にプロフェッショナルのウルトラマリンGSを入れる方が良いです。
おわりに
書きたいこと全部詰め込んだら長くなってしまった…! 詰め込みすぎてて逆に分かりにくいかもしれない…
透明水彩を1から始める時に選ぶブランドとして、W&Nのプロフェッショナル・ウォーターカラーはあまり適していないかなとは思うのですが、ホルベインやクサカベからステップアップしてみたいと思った時に、海外ブランドでは一番買いやすいW&Nで揃えてみようとなる方は多いと思ったので、今回ちょっと攻めてみた次第。
混色はある程度必要にはなりますが、上記18色で大体一通りのものは描けるかなと思いますので、この記事が少しでも色選びの参考になればとっても幸いでございます。