
以前この記事で触れたウィンザー&ニュートンのTHE DAY 2022 特別セットの中に全色ドットカードが入っていたので、早速全色塗ってみました。全109色の中から、個人的におすすめの色とかもちょろっと書いていこうかなと思っておりますので、よろしければ最後までお付き合いくださいませませ。
W&Nのプロフェッショナルウォーターカラーは、2022年6月より約20%ほど値上げになります(グレードや容量によっては30%強の値上がりになります)。そのためセット購入になるとかなり割高になってしまうので、まずドットカードでお試ししてからの購入を強くおすすめします。なおコットマンに関しては価格改定はありません。
その他W&N製品で価格改定がある商品のリストは、下記Webページ内にあるPDFで確認できます。
はじめに: ウィンザー&ニュートンについて
ウィンザー&ニュートン(以下W&N)は1832年に科学者のウィリアム・ウィンザーとアーティストのヘンリー・ニュートンによって設立された、英国の画材メーカー。1835年にグリセリンを使用した世界初のモイストウォーターカラーを発売。1837年にヴィクトリア女王より水彩用筆(=シリーズ7)の開発を依頼され、ロイヤルワラントを与えられます。その後、1841年には初の王室御用達令状が授与され、以来今日に至るまで、王室のお墨付きを得て販売しています。日本国内ではバニーコルアートが代理店となっています。
W&Nの透明水彩には2種類あり、
- 習作用→ コットマン・ウォーターカラー
- プロユース→ プロフェッショナル・ウォーターカラー
という分別になっています(余談ですが水彩紙もこの分別です)。今回はプロフェッショナル・ウォーターカラーのご紹介です。因みにコットマンとプロフェッショナル、どちらが入手しやすいかというと、個人的にはプロフェッショナルの方だと思います。少なくとも地元ではコットマンの絵の具を取り扱いしている所をあまり見かけないです…
あと透明水彩とドローイングインクの影に隠れて目立たなくなっていますが、ガッシュ(不透明水彩)や油絵具もありますよ。特にガッシュは代理店の販売ラインナップにリキテックスがあるので余計に目立ちませんが…
ドットカードとはなんぞや?

水彩紙の上に絵の具を全色少量ずつのせて固めたもので、色味や使用感の確認などに使います。また塗り終わったものはそのまま色見本としても活用できます。ホルベインとセヌリエを除き、主要なメーカーで全色ドットカードを販売しています。
販売ルートが非常に限られているクサカベ以外はAmazonや画材店で購入できますが、Amazonで買う場合は正規価格かどうかを確認してから購入しましょう(特にシュミンケとダニエルスミス)。不安なら世界堂などでの購入をおすすめします。
全109色をご紹介していくよ
ではここからW&Nの全109色をレビューしながら、個人的なおすすめの色もご紹介していこうと思いますよ。
黄色

ホルベインが結構黄色多いのですが、こうやって見るとW&Nも黄色多いですね。カドミウムフリー色を除くとそこまで多くはないのだろうけど…
- ウィンザーレモン
-
3原色イエロー。透明感のあるレモンイエローですが、混色するとちょっと負ける気がする。
- ウィンザーイエロー
-
基本色セットに入っている色で、定番のイエロー。ウィンザーレモンよりも若干赤味があります。
- カドミウムフリーイエロー
-
文字通りカドミウムを使用していないカドミウムイエローで、不透明色。透明水彩の教本でカドミウムイエローが使われている場合、これに置き換えて使う事ができます。ペールとディープの間くらいの色。
- カドミウムフリーイエローペール
-
前述のカドミウムフリーイエローがちょっと赤味強いかな…という場合にはこちらがオススメ。個人的にはこちらの方が使いやすいです。
- ニューガンボージ
-
薄めて塗ると透明感のある黄色、濃く塗ると黄金みたいな色になる黄色。基本色セットに入っている色です。
トランスペアレントイエローやキナクリドンゴールドも似た様な使い方が出来ますが、ニューガンボージの方がやや赤味があるので使いやすいかと。W&Nのキナクリドンゴールドは、ホルベインの同色と比べてちょっと彩度が低いので、黄色としてはちょっと使いにくい気がする…。
オレンジ・赤

オレンジだけで4種類ありますが、どれもスキャナでは色をうまく再現できていないですね…。赤は朱色・真っ赤・暗赤色とまんべんなくある印象。ローズドーレはやや溶けにくかったです。
- ウィンザーオレンジ
-
基本色セットにはレッドシェードの方が入っていますが、ニュートラルなオレンジであればこちらの方が使いやすいと思います(レッドシェードはあまり黄味の強くないオレンジです)。
- トランスペアレントオレンジ
-
元々は限定色の砂漠カラーだった色ですが、2019年にJEWELシリーズとして定番色化したもの。前述のウィンザーオレンジが人工的な色味であまり…という場合はこちらをお試しすると良いかも。
- スカーレットレーキ
-
ターナーのパーマネントスカーレットと全く同じ色。濃く塗ると朱色、薄く塗ると透明感のある可愛いピンクになります。こちらもPR188を使った絵の具としてはお手頃価格。
- ウィンザーレッド
-
基本の赤で、いわゆる真っ赤。ホルベインで言うとピロールレッド、ターナーだとパイロールレッド。
- キナクリドンレッド
-
かなり鮮やかな赤で、薄く塗ると彩度の高い桜色に。染み付きも強くないので重ね塗りにもオススメ。
ピンク・紫

ピンク・紫はそこまで多くない印象。ただ少ない分、色の取捨選択はしやすいのかなと。オペラローズは他のメーカーのオペラ相当色と同様に、耐光性がお察しレベルなので、展示目的の絵で使うのは避けましょう。
- パーマネントローズ
-
3原色マゼンタ。色の深みはないのですが、濃く塗っても薄く塗ってもキレイなピンク。
- ローズマダージェニュイン
-
パーマネントローズよりもちょっと淡い色味。天然の原料から作られた、NR9という非常に珍しい顔料を使っています。バラの香りがする色…なのですが、ドットカードの量では香りまではわからず。
- キナクリドンマゼンタ
-
パーマネントローズよりもやや紫っぽいピンク。他のメーカーだとこちらが3原色のマゼンタとしている事が多い色。彩度は落ちますが、オペラの代わりとしても使えます。
- パーマネントモーブ
-
ホルベインのミネラルバイオレットに近い色。ただかなり粒子が荒い感じなので、気になる人はパーマネントマゼンタかキナクリドンバイオレット(JEWELシリーズ)の方が良いかも。
- ウィンザーバイオレット(ディオキサジン)
-
基本の紫として18色以上のセットに入っています。ホルベインで言うとパーマネントバイオレットなのですが、あちらと比べると濃い紫。
青

青もそこまで多くはないので選びやすいです。W&N以外ではあまり見かけない激レア要素としてプルシャンブルーが2種類あるというのが特徴。単純に色の濃さが違う以外は、色味もほぼ一緒です。
- ウルトラマリン(グリーンシェード)
-
比較的粒子感の少ないウルトラマリン。もっと粒子の細かいウルトラマリンもありますが(まっち・ターナー)、こちらも程よく使いやすいのでオススメ。
- ウィンザーブルー(グリーンシェード)
-
ホルベインで言う所のフタロブルー イエローシェード(CMY3原色のブルー)。W&Nの3原色ブルーはレッドシェードの方ですが、個人的にはこちらのグリーンシェードの方が混色に使いやすいです。
- プルシアンブルー/アントワープブルー
-
プルシャンブルー2種類。プルシアンブルーは染み付きの強い方(こちらが一般的なプルシャンブルー)、アントワープブルーは柔らかめの色で染み付きにくい方。初心者や重ね塗り派の人にはアントワープブルーの方がオススメ。
- マンガニーズブルーヒュー
-
基本のセットにはセルリアンブルーが水色として入っているのですが、純粋に水色として使うのであればこちらが良いかなと思います。セルリアンブルーと比べても比較的粒子が荒くないです。
- フタロターコイズ
-
青寄りの青緑。ターナー海外色のフタロターコイズとほぼ同じ色味。実はターナーの方が量が多い分めちゃくちゃコスパ高い(15mlチューブで550円弱)のですが、少なくていいならこちらがオススメ。
緑

緑もそこまで多くありませんが、比較的使いやすい色が揃ってる印象。ただ、ビリジャンとテールベルト2種は溶けにくかった上にそこまで色が出てくれませんでした。元々そういう色なんだろうか。
- パーマネントサップグリーン
-
便利系グリーンその1で、基本のセットに入ってます。他メーカーに比べるとやや彩度低め。
- フーカスグリーン
-
便利系グリーンその2。メーカーによってはフッカースグリーンと表記されていたりしますが同じ色。サップグリーンとこの色のどちらかがあればとりあえず何とかなるかと。
- ウィンザーグリーン(ブルーシェード/イエローシェード)
-
ブルーシェードはホルベインで言う所のビリジャンヒュー、イエローシェードはバンブーグリーンにあたる色。前者は鮮やかな青よりの緑で、後者はややマイルドな緑。どちらも単色ではほぼ使えないので、混色前提。基本のセットに入っているイエローシェードの方が使いやすいかな。
- ペリレーングリーン
-
ホルベインで言う所のシャドーグリーン。薄く塗ってグリーングレーっぽくしてみたり、イエローオーカー系や黄緑を混ぜてミリタリー色にするのもよし。また黒髪キャラのベース色に使うのも良き。黒の代わりに使ってもいい仕事をしてくれます。
- オリーブグリーン
-
ホルベインやターナーの同色と比べてやや渋めの色ですが、これはこれで良き。黄味が控えめな分、落ち着いた雰囲気の仕上がりに。基本の18色セットに入っています。
茶色

こうやって見ると茶系統が一番多いですね。他のメーカーだと黄色系に分類されているネイプルスイエローが、何故か茶系統に入れられてるのが気になりますが…イエローオーカーに近い色味だからだろうか。ポーターズピンクは色が溶かしにくく、「本当にこんな色なん…?」っていう位にはあまり色が乗りませんでした。
- イエローオーカー
-
定番の黄土色。基本のセットに入ってます。下塗りとして使ったり、混色して彩度を落としたりなど、意外と汎用性の高い色。薄く塗ると彩度低めの黄色としても使えるので、パレットでは黄色かジョンブリアンの横に置くと使いやすいです。もう少し明るさが欲しいならイエローオーカーライトの方が使いやすいかも。
- バーントシェンナ
-
定番の赤茶色。こちらも基本のセットには必ず入っていますが、メーカーによってはやや粒子の荒い色(ホルベインのものはグラニュレーション色になっています)になっていて、塗ると若干ザラつき感があります。
- バーントアンバー
-
定番の茶色。W&Nの基本色セットにはこの色ではなくローアンバーが入っているのですが、茶色としてはこちらの方が使いやすいので、セットで買った人は追加でこの色を買い足すのをおすすめします。
なお、ライトウェイト・メタルボックスセットにはバーントアンバーが入っています。
- バンダイクブラウン
-
前述のバーントアンバーよりも赤みを抑えた色で、赤味のあるセピアとしても使えそうな落ち着いた茶色です。基本の茶色として、ローアンバーやバーントアンバーと置き換えるのも面白そうです。
- ベネチアンレッド
-
赤茶色。バーントシェンナと置き換えて使うのもありですが、落ち着いた赤としても使えそう。もう少し彩度が控えめの方がいい場合はインディアンレッド、透明感が欲しい場合はブラウンマダーがいいかも。
- ペリレーンバイオレット
-
茶系統に入っていますが、茶色というよりは暗紫色。ホルベインやクサカベにはない色です。赤に少し深みを加えたい時に影の色として使うと良さげ。
- キャプトモータムバイオレット
-
ホルベインのマースバイオレットに近い色で、ほぼ同じ様な使い方ができそうな感じ。ターナー海外色のマースバイオレットやセヌリエのカプットモータムと同じ色ですが、こちらの方がちょっと赤味少なめかな。
グレー・黒

グレー・黒系は定番色が揃っていますが、黒と白はあまり使わないかな…
- セピア
-
黒の代わりとして使える色その1。バンダイクブラウンから更に赤味を減らしたような色で、焦げ茶色としても使えます。
- インディゴ
-
紺色ですがグレー系統に入っています。後述のペイニーズグレーと役割が被りがちですが、単色で青としても使えるのでパレットに並べて置いてます。ただ場合によってはインディゴ+ペイニーズグレーではなく、インディゴ+ニュートラルティントの方が役割分担ができて良いかも。
- ペイニーズグレー
-
黒の代わりとして使える色その2。青寄りの黒として使える定番色で、W&Nでは基本のセットには18色セットから入っています。ホルベインのペインズグレーと比べるとやや青味が強め。プルシャンブルーを少量混色するとインディゴの代わりとしても使えます。
- ニュートラルティント
-
黒の代わりとして使える色その3。こちらは紫や赤味がやや強かったり、逆に赤味がなさすぎてニュートラルすぎる黒だったりする、メーカーによってかなり個性の分かれる色。W&Nのものは「ほんのり赤っぽいかな…?」程度で、色味は少ないです。
黒代わりの色は基本的にセピア・ペイニーズグレー・ニュートラルティントのいずれか1色あれば良いので、3色全てパレットに入れる事はほぼないです。
まとめ
私のググり方が悪いのか、W&Nの全色レビューをしているところになかなか巡り会えなかったので、何かの参考になればいいかな程度で色見本などを乗せつつレビューもしてみた次第です(結局全色レビューになってないですが…)
ホルベインからステップアップするのにW&Nの絵の具は非常にオススメです。ただお値段はホルベインの3倍になるので、セットで買ってしまうと結構いい値段になってしまいます。なので、まずはドットカードで全色お試しして、その上で定番の色と気になる色から単品で買い足すのが一番ベストな買い方かなと思います。お金に余裕のある方は18色セットからスタートしちゃうのも良いです。
ただセットで買う場合、色のバランス的に一番いいのはライトウェイト・メタルボックス12色セットかなと個人的には思います。通常の12色セットよりも2000円ほど高くなりますが、白と黒が入っていないセットなので、水彩の入門キットとしてもオススメです。緑は人によっては追加で買い足しが必要にはなりますが…