石川県でしか買えない絵の具・ヤマガミ共育社のメープルカラーをご紹介

今回は、石川県でしか販売されていない、ヤマガミ共育社の水彩絵具「メープルカラー」をご紹介します。

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本題の前に: 能登に心を寄せてくださる方へ

…と、本題へ入るその前に、今回は石川県限定の画材の話…ということで、画材とは関係ないのですがまあまあ大事な話なのでこの件にも触れておきます。まさか絵の具を買った1週間後にこうなるとは思ってもみなかった…


この度の、令和5年5月の能登地方を震源とする地震で被災された方に、心よりお見舞い申し上げます。

これを書いている1週間前(※記事作成当時)に能登で強い地震が発生しまして、今この記事をお読みの方も既に報道でご存知かもしれませんが、珠洲市とその近隣の輪島市および能登町で大変な被害になっております。なお筆者の住んでいる所は震源からはかなり離れているので、実害は今のところ無いのですが、それでも本震時は震度4を観測、体感2分くらいは揺れてました。

奥能登方面を震源とした地震は2年以上も前から群発的に発生していまして、夜中や早朝に地震+エリアメール+緊急地震速報の同時コンボで叩き起こされたことも何度かあります。ここ数年、毎晩「今夜は何事もありませんように」と願いながら横になってます…。

現地では災害ボランティアの活動が始まったり、地震で一時休業していたスーパーや道の駅が営業再開したりと、少しずつではありますが日常を取り戻し始めてはいるようです。群発地震がいつ終息するのかまだまだ先が見えないのが辛いところなのですが、落ち着きを取り戻した頃に能登へ観光にお越しいただけると幸いでございます…!

ヤマガミ共育社について

小学校向け授業用教材の出版・販売を主としている小さな会社です。

「恩師となる先生応援業」と定義しているのが面白いですね。創業時期は戦後間もない1948年(昭和23年)ですが、現在の会社形態になったのは今から40年程前の1980年(昭和55年)。小さい会社ながらも、取引先にはベネッセなど大手の名前も見られます。

なお、メープルカラーと習字セットを除き、原則として一般向けへの販売はありません(一部は通販あり)。

個人的に中の人達の日常が見られるトピックスが好きですw

メープルカラーの特徴

メープルカラーは「子どもたちに安心・安全で、高品質な国産絵の具を」というコンセプトのもとにつくられた、小学校用透明水彩絵の具です。主な特徴としては

  1. 防腐剤など人体に有害な物質を使わず、天然素材のみを使用
  2. 顔料が細かいので、混色しても鮮やかな色をキープする

というところです。小学校用の絵の具に限らず、ホルベインの透明水彩絵でもザラッとする色があるのですが、メープルカラーはどの色もほとんどザラッとしてないです(黒だけはザラッとするかもですが…)。

Facebookに投稿されているものによると「長野で作っている」とあるので、もしかしてまっちベイシックカラーのOEMか…? と思ったりもしました(旧パッケージの形状がなんとなくベイシックに似ている気もする)。が、比較した方が口を揃えて「まっちベイシックよりは彩度控えめかな?」という評価なので、違うのかな…。でもメープルカラーの基本コンセプトはまっちと共通している部分があるんですよねぇ…

店頭価格は後述する取扱店によって前後しますが、11色・12本入りセット(※白のみ2本)が店頭価格で2000円前後、単色のバラ売りは170〜200円前後になります。11mlチューブである事を考えると激安通り越して驚安です。

取り扱い店舗について

セット購入の場合

こちらに限り、通販で購入可能です。お値段は送料込みで2980円。

単色で購入する場合

基本的に石川県内のみ、それも採用している学校が金沢市内とその近郊に限られている為、金沢市近郊でしか購入できません。取り扱い店舗は以下。

金沢市
  • うつのみや 金沢香林坊店・小立野店
  • にしき堂 金沢八日市店
  • 金沢ビーンズ 県庁前本店
  • かゆう堂 寺町本店
  • ブック宮丸 金沢南店
白山市

北国書林 松任店

かほく市

Booksなかだ イオンモールかほく店

野々市市
  • うつのみや 野々市上林店
  • 田井屋 エリア工大前店(※うつのみや 金沢工大前店内)
  • 明文堂書店 金沢野々市店
内灘町

おきの書房

観光のついでに金沢市中心部で購入する場合、うつのみや金沢香林坊店(香林坊東急スクエア内)が比較的分かりやすいかなと思います。金沢21世紀美術館や兼六園などからも歩いていける距離内にあります。

また、湯涌温泉のぼんぼり祭りや県立図書館に寄ったついでなら、うつのみや小立野店が最寄りになります。県立図書館口バス停のすぐ近くにあります。なお湯涌から来る場合は、北鉄バス金沢駅西口行き(路線番号14)に乗り、崎浦バス停で下車してください。

…なんかうつのみやの回し者みたいですが全く関係ないです(学生時代は小立野店にはよく行ってたけど)。

色見本

何はなくとも塗ってみますよ。ひとまず色見本を作ってみました。

メープルカラーは全11色ですが、ここでは9色のみの紹介となります。私はセットではなくバラで購入したので、これからご紹介する中には白と黒は含んでおりません。

スキャン画像では色味を完全に再現出来ていないのですが、とても学校教材とは思えないほど色が鮮やか。

他メーカーの類似色と比較してみる

ここからは他のメーカーの似た様な色と並べて、もう少し詳しく見ていこうと思います。

きいろ・きみどり

きいろ

水少なめだとカドミウムイエローペールに似た力強い発色、水多めだとレモンイエローのような色味。赤みはあまりありませんが、まったく無い訳でもない。W&Nのウィンザーレモンも一緒に塗ってみたけど、ターナーのパーマネントイエローの方が色味が近いかな。

きみどり

ホルベインのパーマネントグリーンNo.1に近い色。水少なめだとクサカベのサップグリーンに近い色味にも出来ますが、彩度が高いので風景画に使うには若干難しい色かも。

みどり・あお・そらいろ

みどり

ほぼPG7・フタログリーン(ブルーシェード)の色味ですね。ホルベインだとビリジャンヒュー、W&Nだとウィンザーグリーン(ブルーシェード)になります。これも彩度高いので基本的に混色して使う色。

あお

コバルトブルーヒュー(ホルベイン)とウルトラマリンの中間くらいかな?っていう絶妙な青。赤やローズと混色すると透明度が高くてめっちゃキレイな紫が作れるので、ウルトラマリンに若干近いかな。

そらいろ

皆絶対気に入る色味だと思います。フタロブルー(イエローシェード)よりも気持ちやや控えめの彩度ですが、ほぼ同じ使い方が出来ました。こちらもローズや赤と混色すると鮮やかな紫が作れますよ。

ローズ・あか・おうどいろ・ちゃいろ

ローズ

PR122・キナクリドンマゼンタに近い色。ちょっと紫がかったピンク。粒子の細かさがマイメリのベルチーノバイオレットに全然負けてません。むしろマイメリよりも粒子感ないかも。

あか

W&Nでいうパーマネントカーマインにかなり近い色味。やや深みのある赤色で、そのまま使って良し、混色して使うも良しの使いやすい色です。これまでの学校教材のあかって朱色とピロールレッドの間くらいの「濃く塗っても色深度がない赤」のイメージだったのですが、これはそのイメージが吹っ飛ぶような色味でした。好き。個人的推し色。

おうどいろ

いわゆるイエローオーカーにあたる色…なんですが、このおうどいろが個人的にはかなりどうしたものかと悩む色。イエローオーカーっていうかトランスペアレントイエローに近いような感じで、かつちょっとグリーンゴールドっぽい色味もあるというか…。彩度を下げる用途にはいいのですが、黄色の代わりとして使おうとすると「なんか思ってたんと違う」ってなります。私だけかな…

ちゃいろ

バーントシェンナというよりはベネチアンレッドみたいな色。ライトレッドとベネチアンレッドの中間くらいかな。シュミンケのイングリッシュベネチアンレッドよりは若干透明度はあるかと思います。ただ水多めにしても、褐色肌じゃないキャラの肌の色として使うには、ちょっと濃すぎるかな…。

塗ってみた

混色しても濁りにくいのかちょっと試しに塗ってみたのがこちら。

スキャン画像では再現しきれていないのですが、確かに混色しても鮮やかな色味はそのまま…! 凄い。

それよりも、コットン紙じゃなくても絵の具がブワッと広がった事に感動しました。この絵に使っているのは、以前「これ絶対100%パルプでしょ」と酷評した(↓)、ポールルーベンスの黒いカバーの方の水彩紙の裏面です。

更にいいますと、いつもは筆洗にオックスゴールを数滴垂らした水を使うのですが、今回はオックスゴールを使わずに塗っています。オックスゴールなしでもここまできれいに塗れるの凄いな…

メープルカラー9色縛りで更にもう1枚塗ってみた

少し難易度を上げて、必ず紫やペインズグレーなどのダークカラーが必要なものを題材にしてもう1枚。

シャディク側で最も死んでほしくない人

題材は水星の魔女のサビーナさん(最近になって自分の中で株が爆上がり中だったので)。

全てのパーツで必ず2色以上で混色が必要、且つ黒が必要な色もあるキャラなのですが、9色でもここまで塗れました…! 混色さえなんとかなれば9色でも十分塗れるよ! っていうのが伝わってくれればいいなと。

なお、混色しても濁りにくいという特徴を持っているとはいえ、4色以上で混色すると流石に濁ります。混色は3色までにしておいて、必要なときは無理せず黒も混ぜて使う(※ただし使いすぎると濁るので程々に)のが、色数の少ないまっちベイシックカラーやメープルカラーの場合は重要なのかもしれませんね。

ただやはり「こげちゃいろ」という、もう1つの茶色の選択肢はあってもいいのではないかと思います。いくら混色次第でなんとかなるとはいえ、毎回同じ色味の茶色を作るというのは難易度が高いので…

あと子ども用なのに「はだいろ」を廃盤にしてしまったのはどういう事情なんでしょうね…。肌色って小学校低学年の図画制作ではかなり出番のある色なんですが、昨今の多様性の問題で消えたのだとしたら色々複雑ですね…

まとめ: 高クオリティだけど、あくまでも「子どもの為の絵の具」

子ども用と聞いて、どうしてもサクラマット水彩だったりぺんてるエフのような「なんちゃって透明水彩」なんだろうな…と思っていただけに、良い意味で裏切られました。発色も使い心地も、ホルベインやクサカベなどのプロユース向けの透明水彩に全く負けていないのです。

…とはいえ、やはり子ども用なので、顔料の個性を活かした塗り方をすることは出来ません。逆に、カラーインクで塗っていた人の場合、彩度こそカラーインクよりもかなり下がるものの、透明水彩の顔料の個性に左右されないぶん、違和感なく作業を進められるのではないかと。カラーインクから透明水彩にシフトしたい人が、初めて買う透明水彩絵の具としてこれを買うのは良いと思います。入手難易度的にはまっちの方がもっと良いとは思いますがw

11mlチューブでなかなかなくならないし、捨て色もほぼないので、ぜひ金沢土産としても…!(ニッチ過ぎる)

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