ジョンブリアンだとなんかしっくり来ない…という、肌色でお困りの方に、ジョンブリアン以外の色で肌を塗るというご提案をさせていただきたく。色んなパターンで塗ってみたのでご参考になれば幸いです。
肌色といえばジョンブリアンだが…
透明水彩でコミックイラストを塗る時に、誰もが通るであろうつまづきポイントが「肌を何色で塗るか問題」だと思うのです。コミックイラストなら、
- ジョンブリアン(ホルベイン・クサカベ・ターナー海外色など)
- ネイプルスイエローレディッシュ(シュミンケなど)
通常はコピックのE系やYR系に近い色味である、上記2色のうちのどちらかを使うと思います(特にシュミンケの場合は「肖像画および裸体画に推奨」とパンフレットに書かれている)。
私も最初のうちはホルベインのジョーンブリヤンNo.2を使って塗っていましたが、スキャンすると結構黄色強めに出力されてしまう…。これがどうしても気になってしまい、ホルベインと比較して黄味の少ないクサカベのジョンブリアンやターナー海外色のジョンブリアン(レッドシェード)も使ったのですが、やはりスキャン後の色調補正がうまく行かぬ…。上の画像も極力原画に近づけるように補正をかけてますが、残念ながら完璧にはできてません。
また、ジョンブリアンは白の顔料が配合されている不透明色である為、どうしても主線の色が隠れてしまったり、濃淡を出しにくいという弱点もあります。これは作風によっては非常に困る奴で、実際私も割と困ってた口でした。そんな時、twitterの「#winsornewtonの推し色を5色挙げる」で見かけたのが「ライトレッドで肌を塗る」という選択肢でした。
W&Nにはジョンブリアンやネイプルスイエローレディッシュに相当する色がないので、これで揃えようとすると必ず肌色をどうするか問題にぶち当たりますが、それをライトレッドで解決していたようです。物は試しとライトレッドを購入して試してみると、他の色となんかうまいこと馴染んで自然な仕上がりに見えたのです。あとスキャン後の補正作業が以前よりもかなり早く終わった事に驚愕。
それからしばらくして、ふと「ライトレッド以外にも肌色として使えるものがあるのでは…?」と思ったので、今回色んなパターンで肌に使えそうな色を試してみました。
ジョンブリアン以外で肌を塗ってみた 全体図
というわけで、気になる色を追加で買いつつ、肌色として使っても違和感がなさそうなものを混色パターンも含めて12種類選んでみました。museのDoアートペーパーに、デジタルで描いた線画をグレーで印刷して塗りました。塗りが雑なのは見なかった事に…orz 以下、個別に見ていきたいと思います。
ウェパル(メギド72)をチョイスしたのはたまたま手つかずの線画があったからです。
単色で塗ってみたシリーズ
バーミリオンヒュー(ホルベイン)
- Pigment: PO73/PR254/PY110
- 半透明色
- セミステイン色
基本のセット品に必ず入っている色。画像だとやや黄色みがかってますが、実際にはもう少し赤味が強いです。赤みを抑えたい場合は若干透明度を下げてしまう事になるのですが、イエローオーカーを少し混ぜて彩度を下げてもいいかなと。
なお、顔料構成がバーミリオンヒューとほぼ似ているものに、同じホルベインにスカーレットレーキ(PO73/PR254/PV19)という色がありますが、こちらは黄味がほとんどないので、単色ではかなり不自然になってしまいます。スカーレットレーキを肌色として使うには黄色との混色が必要。
イミダゾロンブラウン(ホルベイン)
- Pigment: PBr25
- 透明色
- セミステイン色
基本のセットに入っているバーントシェンナやバーントアンバーよりも透明度の高い茶色。かなり薄く溶いて塗る必要がありますが、ライトレッドで塗った時よりもかなりピンク寄りの肌色になりました。
後述するマイメリのポッツォーリアースにちょっと色合いが似ているので、コストの都合でマイメリを使うのが難しいなら、こちらを選ぶのも十分アリです。
ライトレッド(ホルベイン)
- Pigment: PR101
- 半不透明色
- ステイン色
24色セットと全色セットにしか入っていない色。後述するW&Nのライトレッドとは顔料が違うので、色味も若干明るめ。染み付きやすい色なのですが、肌色として使うには色味もお値段も一番お手頃だと思います。もっと明るめの色合いが良い方はクサカベのライトレッドも良いです。
ライトレッド(W&N)
- Pigment: PR102
- 半不透明色
- ステイニング特性: なし
以前書いたこの記事(↑)で、「最強の18色」として選んだ色です。ホルベインのライトレッド(PR101)と比べると、気持ち赤味は控えめかな。落ち着いた色合いになります。やはり最強の18色として入れているパーマネントマゼンタで薄めに肌影を先に塗り、完全に乾かした上からライトレッドを重ねてあげると、セクシーな色味の肌になります。おすすめ。
ポッツォーリアース(マイメリ)
- Pigment: PR102
- 半不透明色
- ステイニング特性: なし
W&Nのライトレッドと同じ顔料のようですが、実は天然の酸化鉄から作られているという珍しい色。色味もW&Nのライトレッドと比べるとややピンク寄りの色。マイメリ以外のメーカーではほぼ見かけないオンリーワンな色味なので、マイメリならではの色が欲しい人に超おすすめ。ただ人気色なのでよくチューブが欠品する点には注意(私もチューブでは買えなくて結局ハーフパンで買った)。
肌色としてはブルベ向きですが、乾かした上から更に薄く重ね塗りするとイエベっぽい色合いにもできます。
例えばDFF…というか野村画のセシルは色白肌で、バッツは健康的な肌なので、この絵ではその差をわかりやすくするために、バッツの方は肌を塗り終えた後に一旦乾かしてから、更に薄くポッツォーリアースを重ねています。若干わかりにくくなってますが、セシルの肌はほぼ重ね塗りしてません。
イングリッシュベネチアンレッド(シュミンケ)
- Pigment: PR101
- 不透明色
- ステイン色
全ての基本セットに入ってる色。この色が基本の12色セットに入っているのは珍しいです。
水少なめだとなかなか強烈な濃さの赤茶色になりますが、水の量を多めにしてかなり薄く溶いてから塗ると、肌色として使うこともできます(これを肌色として使っている透明水彩絵師さんもいます)。不透明色となってはいるものの、薄く溶いて使うので、主線が薄くなって見えなくなることはほぼないと思います。
今回塗った中では最も塗りムラが目立たなかったので、塗りを綺麗にまとめたい人におすすめ。
キナクリドンシェンナ(ダニエルスミス)
- Pigment: PO48/PR209/PY150
- 透明色
- ノンステイン色
目の細かいDoアートペーパーに塗ったので目立たなかったのですが、ドットカード見たら思いっきりグラニュレーション色って書いてある…。肌色に使えそうなのですが、流石に肌をグラニュレーション色で塗るのは解釈違いだな…
色味的には赤みを抑えたホルベインのバーミリオンヒューみたいな感じなのですが、目の荒い紙を使う場合に肌色としてこれを使うのは、個人的には推奨しないです。
バーントシェンナライト(ダニエルスミス)
- Pigment: PR101/PO48
- 透明色
- ノンステイン色
こちらは非グラニュレーションとなっているのですが、キナクリドンシェンナと同じ位ザラッとしているように見えるのは気のせいかな… 単にシボシボ感が強いだけなのかな…
色味的にはイエベっぽい。日焼けした肌〜褐色肌はこれ1色で塗れそう。逆に色白系はやや苦手な感じがするので、肌の色が異なるキャラが複数いる絵の場合は他の色と使い分けて塗るのが、比較的失敗しなくて済むかも。
オージーレッドゴールド(ダニエルスミス)
- Pigment: PY83/PR101/PV19
- 透明色
- ローステイン色
絶対にこれ単色では肌を塗ってはいけない色だった。
これじゃただのミカン食い過ぎた人じゃん、と塗り終えた後になって気が付きました(お馬鹿すぎる)
実際に肌色として使うなら赤との混色が必須。自分の手持ちのドットカード(66色)の色の中から選ぶとしたら、キナクリドンローズかキナクリドンコーラル、もしくはキナクリドンフクシアのいずれかとならちょうどいい塩梅になりそうかなと。後述のキナクリドンバーントスカーレットと混ぜても…と思ったけど、どうもキナクリドンバーントスカーレットの方が負けるような気がするのでダメそう…。
キナクリドンバーントスカーレット(ダニエルスミス)
- Pigment: PR206
- 透明色
- ローステイン色
こちらも非グラニュレーション色ではあるものの、やはりシボシボ感がちょっとあるかな。でもこれまで紹介してきたDSの色の中で最もブルベ向きな色で、かつ単一顔料色。心なしか一番透き通った肌に見えなくもない。色味的にはポッツォーリアースを更にピンク寄りにしたような色。より自然な肌にするなら、少し黄色を足した方が良さそう。
イエローオーカーと混ぜてみたシリーズ
ブラウンマダー+イエローオーカー(ターナー)
配合比率はブラウンマダー:イエローオーカー=1:2 程だったかな(覚えてない)
初めて試した混色の組み合わせなのですが、色白肌から褐色肌までこれだけで十分塗れるのではないかと思います。混色の難易度も低いし、下塗りに使う色としてもそこそこ使いやすいと思うのですがどうだろう。ブラウンマダーを買ってみたけど、うまく使いこなせないな…と思ったら是非試してほしい混色レシピです。
ちなみにこの色の組み合わせはW&Nでも作れるのですが、ブラウンマダー・イエローオーカーともにターナーのものとは顔料が違うので注意。W&Nの方のブラウンマダーを持ってないので試せていないのですが、ドットカードの色味を見る限りW&Nの方がやや色が鈍くなりそうな予感? 後日ちょっと作ってみよう。
スカーレットレーキ+イエローオーカー(W&N)
ちょっと透明度の下がったライトレッドっぽい色味。ターナーのパーマネントスカーレット+イエローオーカーでも大体同じ色味になります(ターナーのパーマネントスカーレットはW&Nのスカーレットレーキと全く同じ顔料と色味)。特にターナーはライトレッドが海外色にしかないので、ライトレッドの代わりとしても使えると思います。
他にも肌色として使えそうな色たち
自分の手持ちにはないのですが、これも肌色として使えそうかな…? っていう色を以下にずらずらと箇条書き。この中だとドラゴンズブラッドは肌に使っている人をちらほら見かけるかな。
- バーミリオンヒュー(ホルベイン アーチストパンカラー) ※チューブとは顔料が異なる
- ドラゴンズブラッド(マイメリ)
- トランスペアレントマルスレッド(マイメリ)
- トランスペアレントシェンナ(シュミンケ)
- トランスペアレントブラウン(シュミンケ)
- トランスペアレントレッドオキサイド(ターナー海外色)
流石に全部買うのは無理なのですが(顔料も似たりよったりなので被っちゃう)、買ったらまた作例とか追記しようかなとは思ってます。ハイ。
まとめ: みんな違って、みんないい
というわけで、ジョンブリアン以外の色で肌を塗ってみたというお話でした。
この中でどれが最強かって言われたらポッツォーリアースなんですが、価格と色味のバランスで考えるなら、
- ライトレッド(ホルベインかW&N)
- イミダゾロンブラウン(ホルベイン)
- ブラウンマダー&イエローオーカーの混色(ターナー)
この3パターンも強いです。コストも抑えつつ、色白肌から褐色肌まで幅広くカバー出来ます。
でも、それぞれで良い所があるので甲乙つけ難いです。みんな違ってみんな良い色。…単体で塗っちゃうとただのミカン食い過ぎた人になってしまうオージーレッドゴールドはさておいてw あとイエローオーカーは偉大。
今回様々な色味をお試ししてご紹介してみましたが、ジョンブリアンから乗り換えるのであれば、まずはライトレッドから試してみると良いかなと思います。合わなかったら、そのまま普通の赤茶色として使えばいいので!