最強のホルベイン透明水彩18色セットを考えてみる

Information

この記事は Otaku Social(おたそ~)Advent Calendar 2023【紫展示棟】 12日目の記事です。

※第1会場である青展示棟はこちら ↓

Contents

はじめに

このページに来られる方は検索だけでなく、アドベンドカレンダーやおたそ〜以外のFediverseサーバー(主にMisskeyでの拠点にしているにじみすや9ineverseとか)からも来られるかなと思うので、この記事を書くに至った経緯などをさらっと触れておこうと思います。

18色セットのクセが強いのはW&Nだけじゃないな…などと思った

「僕の考えた最強の透明水彩18色セット」、実は以前ウィンザー&ニュートンでやりました。↓

この記事、有難くもこのサイトで最も読まれているのですが、ふと「W&Nの18色も大概だったけど、ホルベインもクサカベもターナーもまあまあクセ強な18色セットだよなぁ」などと思ったりしました。

別メーカーでもやってみようと思った

というわけで第2弾を書くにあたり、fediverse界隈で以下のアンケートを拡散してもらうことに。

この項目なら圧倒的にホルベインだろうなと思いながらも投稿。場所は悩んだ末に一日のアクティブユーザー数が常に600人程度はいるにじみすにしたのですが、今思えばもっと多いioかfedibirdの方が良かったかもしれない。

結果は当初の想定通りホルベインだったのですが、ターナーにもクサカベにも一定数票が入ったのを見ると、シリーズ化するのもありかなと思ったりはしました(需要はさておき)。特にクサカベはドットカードを常時販売しているわけではないので、要望が多いようならやってみる価値はありそうです。

ホルベインのセットについて

24色以下のセットは色組みのクセがすごいんじゃ…

水彩を始めようとした人の大半がおそらく最初に取るであろうと思われるホルベインの12色セット。しかしホルベインの12色セット、組み込まれている色にクセがありすぎて、絵の具の顔料や色の特性を理解していないと圧倒的に使わない色が必ず出てきます。特にビリジャンヒューはそのままの色では使わないものの筆頭です。

そこで、ホルベインに関しては18色以上のセットをおすすめする方が多いのですが、正直ボタニカルアートセット(24色)以外ですと、人によっては3色くらいは圧倒的に使わない「死に色」が出てくると思います。

でも「クセがすごい=全く使えない」ことは絶対にない

というのは、「弱虫ペダル」の渡辺航先生がカラーイラストの着彩にホルベイン18色セットを使っているからです(ソースは浦沢直樹の漫勉neo)。番組内で18色セットの箱も映ってましたので間違いないかと。

なので、通常の18色セットでは全くダメな事は絶対にないので、それだけは頭の片隅においた上で読んでいただけると幸いです。何なら自分も最初は18色セットにオペラ・インジゴ・パステルピンク2種・ラベンダー・ライラックだけでスタートして、それでその年のInktober完走しましたし…

24色以上あれば混色いらないけど、多ければ多いほどいいわけでもない。しかし12色だと少ない。なら間を取って18色程度でスタートするのが導入コスト的にも良いかな?(透明水彩は絵の具よりも紙の方が重要なので)…ということで、全108色あるホルベインの透明水彩絵の具から、僕の考えた最強の18色を選抜してみることにします。

実は「僕の考えた最強の12色」は作っていた

早速18色を選抜…の前に。実は1年前にホルベイン私的12色セットを作ってはいたのです。ラインナップは以下。

僕の考えた最強のホルベイン12色

混色必須ですが、これなら全く使わない色は出てこないかな…? といった色をチョイスしてます。これをベースに、残りの6色を選んで「僕の考えた最強のホルベイン18色セット」を考えていきたいと思います。

選定基準を選ぶ

今回もW&Nの時同様、選定基準を決めています。ただW&Nと同じ基準にしてしまうと、ホルベイン透明水彩ならではの色が全く使えなくなってしまうのと、水彩初心者が最初に使うブランドがホルベインであることが多いこともあり、比較的ちょっと甘めにはしてみました。

またW&N編の時と同様に、ステイン色(染み付きの強い色)や不透明色を避ける縛りは入れていません。これを徹底してしまうと、ホルベインならではの人気色が軒並み選択肢から消えてしまうので…

なお、透明色だけでホルベイン12色組んでみたパターンについては、ここの100倍以上素敵な記事を書かれている先駆者がおられるので、こちらをご参考に。↓

毒性注意色は入れない

ホルベインのパンフレットより引用

W&Nの時と同様、

  1. CLマークがあるもの
  2. APマークであっても「毒性注意記号」が付与されているもの

これらは採用しない方向にしました。ちなみに2はジョーンブリヤンNo.1やネイプルスイエローなどが該当します。

普通に使うぶんには特に神経質にならなくてもいいようなのですが、我が家には猫がいるのと自分自身がアトピー肌である事もあって、リスク回避も兼ねてやはり避けています。

耐光性が極端に低い色は入れない

以下の色については耐光性に問題のある色のため、W&N編同様に選択肢から外しました

  1. オペラ
  2. ブライトローズ(ルミナス)
  3. ブライトバイオレット(ルミナス)

特にオペラは混色で彩度の高い色を作る為には必要不可欠な色で、ホルベイン水彩総選挙では殿堂入りになり、SNS企画でオペラ単独での企画が開催されるほどの人気色です。故に「なんでオペラ入れてないねん! アホか!」って言われると思います。間違いなく言われます。

ただ、将来的にbooth等で原画販売したい or 展示に出したいとなった場合や、データ化せず原画を長期保管する場合等を考慮した時、経年劣化で色が飛んでしまうオペラを使うのはややリスクが高いです。すぐデータ化する場合なら問題ないのですが、様々なリスク回避も兼ねて念の為この様な対応としました。ご了承下さいませ。

ちなみに、いずれの色も蛍光顔料を使っているため、スキャンではほとんど出ません…。

3原色を入れる

主要なメーカーの透明水彩絵具のセット品には、そのメーカーが定義する3原色が一部しか入っていない、あるいは3色とも同梱されていない事が多いです。3原色に触れないのはもったいないなと思うのです。

ただ3色縛りで描くのはとても難しい(自分も小学校の授業で3原色+白のみで写生しましたがそれでも思った通りの色を作るのに難儀した記憶があります)ので、あくまで色の選択肢を増やす目的でのみ入れてます。

ちなみにホルベインの場合は3原色が2パターン用意されています。

RYB

※RYBはホルベインでは持っていなかったのでW&Nの同じ顔料のもので代用

色彩理論的にも初心者には分かりやすい色がこのRYB形式だそうで。混色してできた色は少し赤みを帯びた落ち着いた雰囲気の色になります。茶系統を作りたい時は、こちらの方が思った通りの色を作れそうです。

CMY

しかし同人経験者的に分かりやすい、というか馴染みが深いのは多分こちらのCMY方式だと思います。いわゆる「印刷の三原色」で、これに黒を追加するとCMYKになりますね。混色すると鮮やかな色合いになるので、こちらのCMY方式を採用しています。オレンジや紫はこちらで作るとキレイな色が出来るかと。

話がめちゃくちゃ脱線しますが、同人誌印刷の場合だと、マゼンタをKP(蛍光ピンク)に100%または特定の割合まで差し替えて印刷する「蛍光ピンク差し替え」や、CMYKにKPを加えた「5色分解カラー」というのが、印刷所によってはオプションで用意されていたりします。20年程前まではオフセットのみにしか使えなかった上にとても高かった記憶がありますが、最近ではオンデマンドでもKP差し替えが使えたりするようです。時代は変わったなぁ…

ホルベイン水彩総選挙の上位に入った色も入れてみる

過去に開催された「ホルベイン水彩総選挙」の中から、2020年開催分・2021年開催分で上位12色以内に入った色からも組み込んでいます。この水彩総選挙の上位に入る色にはパステルカラーや粒状化色が結構多いです。

W&N編では粒状化色がおおよそ初心者向けではないな…という色もあったので、これらを避けて18色選びましたが、ホルベインの粒状化色はW&Nと比較すると、青系やコバルト系以外に限って言えばそこまでつぶつぶ感は主張していないかな…と思ったので、敢えて粒状化色も入れました。

ちなみに粒状化色のザラザラ感を抑えたい場合は、やや硬めの筆だとうまくいくようです↓

ただ、粒状化色もパステルカラーも入れたい色がたくさんあったのですが、入れたい色全部入りにすると普通に18色オーバーになってしまうので、涙をのんで蹴った色もたくさんあります。なので、「あの色がない! この色もない!!」というのは確実にあります… 主にラベンダーとかラベンダーとかラベンダーとか。

18色選んだ結果がこれだよ!

前置きが長くなってしまいましたが、選定基準を踏まえて選抜した18色がこちらです↓

ホルベイン私的18色

通常の18色セットよりも導入コストが高くなってしまうのですが、なるべく死に色が出ないような構成にはしてみたつもりです(つもり…)以下、代替色や使い方なども含め、個別に紹介していきます。

シリーズ区分と価格について

W&Nの時と同様に、色名の横にシリーズ区分を書いています。シリーズA〜Dまでの5mlチューブなら、W&Nと違ってそこまで高くつきにくいです。15ml以上だと、色によっては逆に高くつくこともあります。

定価から割引になっていたりする事が多いので、一応メーカー希望小売価格を載せておきます。

シリーズ/サイズ5ml15ml60ml
シリーズA220円418円1155円
シリーズB242円473円1320円
シリーズC330円660円1760円
シリーズD352円715円1925円
シリーズE462円968円
シリーズF484円1012円
※2023年3月時点での価格(すべて税込表記)

赤・ピンク

キナクリドンマゼンタ(シリーズC)

3原色マゼンタ。W&Nの私的18色の時には入れなかった色です。

彩度はかなり落ちてしまいますが、耐光性の低いオペラやブライトローズの代わりとしても使えます。ホルベインのカテゴリーでは紫扱いになっていますが、他メーカーだとピンクにカテゴライズされています。

実は後述するキナクリドンレッドの方が、薄めてピンクとして使う場合に最も使いやすい色味なので、ちょっと役割被るか…? と心配になりますが、紫寄りの冷たいピンクを塗りたい場合はキナクリドンマゼンタ、まろやかピンクの場合はキナクリドンレッド…と、塗りたいピンクの色合いで使い分けられるので、両方あるとやはり便利です。

キナクリドンレッド(シリーズC)

基本の赤としておすすめの推し。海外メーカーではこの色が3原色マゼンタになっていることが多いです。

W&Nのパーマネントローズ同様、濃く塗ればほんの少し紫っぽい色味もある赤、薄く塗ると鮮やかなピンク色になる万能マゼンタ。色の深みはあまりないけど、薄めても彩度があまり下がらないので、赤・ピンク系の中でも扱いやすいと思います。明るいピンクは作れませんが、少し暗めの赤がお好みならピロールルビン(シリーズA)を。

ピロールルビンよりも更に暗めの赤がお好みの場合は、パーマネントアリザリンクリムソン(シリーズC)も良いと思います。基本のセットに入っているクリムソンレーキ(シリーズA)も暗めの赤で色味も悪くないのですが、赤として使うにはだいぶ癖があるので厳しいです。暗赤色として使うなら全然アリ。

スカーレットレーキ(シリーズB)

朱色系。W&Nにも同じ名前かつ色合いも似ている色がありますが、顔料構成が全く異なります。個人的にはW&Nと、W&Nと全く同じ顔料で名称が違うターナー(パーマネントスカーレット)の方が激推しなのですが、ここはホルベイン記事なのでこれ以上はやめておきますw

濃く塗ると黄色みのない朱色ですが、薄く塗ると可愛いサーモンピンクになります。黄色みのある朱色が欲しい場合は、基本のセットにも入っているバーミリオンヒュー(シリーズA)がおすすめ。

実はバーミリオンヒューとスカーレットレーキはどっちを選ぶかでかなり迷いました…

シェルピンク(シリーズA)

ホルベイン水彩総選挙2020 第6位

パステルピンクは他にもブリリアントピンクがありますが、黄色を少し混ぜたら色白な肌色としても使えそうなこちらをチョイスしました。ただ色味がだいぶ淡いので少し濃い目に塗ると良いかも。

純然たる肌色として使える色がいいならジョーンブリヤン No.2(シリーズA)がおすすめ。ただ、こちらは黄色みが強めな反面、赤みがやや少ないです。ピンクや赤を少し足してあげるとより自然な血色になります。

イミダゾロンイエロー(シリーズB)

3原色イエロー。

ニュートラルな黄色ですが、RBYの方の3原色イエローに指定されているイミダゾロンレモンと比べると、少し暖かい色。イミダゾロンレモンは少し冷たい感じの色です。ただイミダゾロンレモンの方が混色した時により鮮やかな色が作れるので、実はこっちがCMYのイエローなのでは…? と思ったりはしますw しかし単色で使った場合は、やはり程よい色合いのイミダゾロンイエローの方に軍配が上がります。

イミダゾロン系は混色すると相手の色に負けてしまうのですぐに染まってしまいます。混色前提で使う場合は量を多めに用意しましょう。もう少し赤みが欲しい場合はガンボージノーバ(シリーズB)を選ぶという手もあります。

なお、毒性注意色は選択肢から外していますが、もしカドミウム色に抵抗がなければカドミウムイエローライト、もしくはカドミウムイエローペール(いずれもシリーズC)を代わりに入れるのもアリです。

キナクリドンゴールド(シリーズC)

ホルベイン水彩総選挙2021 第3位

こちらは以前「こっくりカラーセット」でご紹介しました!

濃く塗ると山吹色、薄めて塗ると淡黄〜クリーム色になります。W&Nのニューガンボージやキナクリドンゴールド同様、これ1色で金髪キャラが塗れます。やや赤みがあるので、特にニューガンボージがしっくりこないという方は一度こちらをお試ししてみると良いかなと。

そこまで濃い山吹色じゃなくてもいいなら、イソインドリノン イエロー ディープ(シリーズC)が、透明感のある淡い山吹色でおすすめです。薄く塗った時の色味がとてもまろやかで好き。なお、こちらは濃く塗るとイエローオレンジになるので、キナクリドンゴールドと比べると色の深みは出しにくいです。

ビリジャンヒュー(シリーズA)

もともとは「フタログリーン(ブルーシェード)」という名称なのですが、メーカー毎で名称が異なります。例えばW&Nだと「ウィンザーグリーン(ブルーシェード)」で、クサカベだと「ビリジャン(ネオ)」です。元の名称のフタログリーン ブルーシェードの名称で販売しているのはシュミンケとターナーぐらいです。

毒々しいほどに鮮やかな青緑なので、原則そのままでは使いません(というか使えない)。必ず他の色と混ぜて使うのが基本になります。混色なしでそのまま使いたい場合はフーカスグリーン(シリーズB)と置き換えると良いです。ただビリジャンヒューは混色次第でいろんな緑が作れるので、ぜひ混色で遊んでみてほしいな…

サップグリーン(シリーズB)

こちらはやや渋めの黄緑色。色の幅が広いのでこれ1色だけで黄緑色から渋めの緑まで表現できます。

サップグリーンはメーカー毎によって顔料の配合が異なるので、同じ色でも色味が違います。例えばW&Nやターナーのものはやや渋めの色味ですが、ホルベインやクサカベの場合は薄めて塗ると明るめの黄緑が顔を出してきます。薄めてもやや渋みのある黄緑になるW&Nやターナーはどちらかといえば風景画向き、色味がやや明るめのホルベインやクサカベはどちらかといえばコミック向けかなと。個人的にはホルベインのサップグリーンが一番色味が好きです。

サップグリーンに関しては代替できそうな色があまりないかなぁ…。敢えて挙げるならフーカスグリーンですが、黄みが強めでサップグリーンほどの赤みはないので、どちらかといえば前述のビリジャンヒューの代替色ですね…

フタロブルー イエローシェード(シリーズA)

3原色ブルー。プリンターのシアンの色、といえば分かりやすいかな…?

混色では絶対に作れない色。薄めて使っても彩度があまり下がらないので、水色としても使える万能ブルー。ただ染み付く力も強いので、リフティングが苦手な水彩紙だと間違えてもなかなか色を抜きにくいです。なお、染み付きが強すぎると困る! という場合は、粒状化色ですがピーコックブルー(シリーズA)も良さそうです。ちなみにこの色はホルベイン水彩総選挙2020で8位にランクインしている色になります。

基本の12色セットには、後述するプルシャンブルーとコバルトブルーヒュー(シリーズA)がデフォルトの青として組み込まれていますが、どちらもそのまま水色として使うには色がやや暗いです。海の色を表現するにはいいのですが、空の色となると厳しそう。冷たい冬空の表現ならともかく、夏の空を描きたい時は困るかも…

プルシャンブルー(シリーズA)

ホルベイン水彩総選挙 2020: 第5位/2021: 第6位

フタロブルーイエローシェードよりも染み付きが強く、実はとても扱うのが難しい色なのですが、ホルベイン水彩総選挙では上位ランクインの常連色だったりします。

扱いが難しいのにも関わらず、基本のセットに必ず入っている青。これ1色だけで表現出来る色の幅が広いので意外と万能。混色で落ち着いた色を作るのにも向いています。この色はW&Nとターナーでも持っていますが、ホルベインのプルシャンブルーの方が気持ち彩度も明るめで好きです。でもマイメリのプルシャンブルーも気になる…

ただ絵の具の性能的にはW&Nのアントワープブルーの方が激推しです。この色もプルシャンブルーの仲間で、ガツンとした濃い色は出しにくいですが紙に染み付きにくいです。水彩初心者の方はこちらの方が扱いやすいと思います。

ホリゾンブルー(シリーズA)

ホルベイン水彩総選挙2020 第9位

パステルブルーは、基本の18色セット以上からコンポーズブルー(シリーズA)という色が入っているのですが、ホリゾンブルーはコンポーズブルーよりも色が明るめの不透明色。コンポーズブルーと比較して深い色合いは出せませんが、「The 水色」っていう、すごく分かりやすい色。チューブから出した色も可愛い。

透明性と色の深さの両方を求めるなら、マンガニーズブルーノーバ(シリーズB)の方がおすすめ。ホリゾンブルーと比べてやや染み付きやすいですが、他メーカーが出している同系色・マンガニーズブルーヒューと比べてザラザラ感がなく、超快適。自分のパレットにはメイン・サブともにこちらを入れています。

パーマネントバイオレット(シリーズB)

こちらも以前「こっくりカラーセット」でご紹介しました!

他メーカーでは「ディオキサジンバイオレット」という名称で販売されている色。こちらもW&Nとターナーで持っていますが、それらと比較するとほんの少し淡い感じがします。紫は毎回同じ色味を混色で作るのはとても難しいので、基本の紫だけでもあった方がいいと思います。

基本の紫なのにも関わらず、公式オンライン限定のこっくりカラーを除くセット品には、ボタニカルカラーと48色以上のセットにしか入っておらず、それ以外は後述のミネラルバイオレットが代わりに組み込まれています。パーマネントバイオレットが染み付きやすいからなのかな…と思ったけど、より染み付きやすいプルシャンブルーは全セットに入ってるので、なんかそういう理由でもなさそうなんだよなぁ。謎。

ミネラルバイオレット(シリーズB)

ホルベイン水彩総選挙2020 第12位

ボタニカルカラー24色を除く、18色以上のセットに必ず入っている色。

W&Nのパーマネントモーヴに似たような色味ですが、あちらとは違い溶けにくかったりなんて事がなく快適に使えます。影の差し色などに使って、妖しい感じを出すのにはうってつけの色だと思います。

基本の紫は前述の通りパーマネントバイオレットなのですが、あちらがニュートラルな紫であるのに対し、こちらはやや赤みを帯びた紫です。人によってはこちらの方が使いやすいかもしれません。粒状化色ではないのですが、薄く塗った部分は(よく目を凝らしてみないとわからないレベルですが)僅かにマゼンタが分離しています。

もっと淡い色がいいのであればライラック(シリーズA)に変えるのもおすすめです。こちらも人気色。

マースバイオレット(シリーズB)

ホルベイン水彩総選挙2021 第1位

こちらも以前「こっくりカラーセット」でご紹介しております!

キャプトモータルバイオレットに似た色味ですが、それよりも更に茶色みの強い色。ホルベイン水彩総選挙2020までは上位にはいなかったのですが、2021では推し色に挙げた方が圧倒的に多く、見事第1位に輝きました。

ターナーにも海外限定色でマースバイオレットがあります(ジャパネスクカラー2でいう海老茶色)が、顔料構成が異なります。ザラザラ感はターナーよりもホルベインの方が控えめで使いやすいと思います。あとターナーよりも入手難易度が圧倒的に低い(※こことても重要)。紫にカテゴライズされていますが、茶色として使う方が多いかな。

水彩初心者向きとは言えない粒状化色ですが、ホルベインのこの色とオリーブグリーンは紙目が荒すぎる水彩紙でなければそれほど気にならないです。中目までだったら軽率に使ってしまっても「若干シボシボ感があるかな…?」程度で収まってくれます。ただ混色すると色によっては派手に分離してしまうので注意。

茶・グレー

イエローオーカー(シリーズA)

いわゆる黄土色。茶色系統にカテゴライズされてる色ですが、私は黄色として使っています(なのでパレットに入れる位置も黄色の横です)。イミダゾロンイエローやキナクリドンゴールドよりも彩度が控えめなので、あまり派手派手しい色合いにしたくない時は、こちらを黄色として使うと、落ち着いた感じの色合いに仕上がります。

より透明感が欲しい場合はローシェンナ(シリーズA)かなと思ったのですが、茶色がやや強めなのでこれを黄色として使うには少し無理があるかも…と感じたので、この色だけは他の色には置き換えられないかな…

セリス

この絵の黄色部分はほぼイエローオーカー(影の部分はW&Nのペリレーンバイオレット)のみ、使用した紙はランプライトです。紙目の色が白くないランプライトやウォーターフォードナチュラルなどで使うと、さらに落ち着いた仕上がりになります。レトロな感じの仕上がりにしたい時には、これらの紙と併せて使ってみてください。

また混色しても鈍い色やくすんだ色にはならず、相手の色を落ち着かせていい感じの色に調整してくれます。

赤または赤茶系+イエローオーカーの混色でいい感じの肌色が作れます。特にブラウンマダーやベネチアンレッドのような赤茶色と混色すると、不透明じゃないジョーンブリヤンっぽい色になります。お試しあれ。

枯葉庭園さんのイエローオーカーの記事には、この記事よりも遥かに分かりやすいイエローオーカーの活用法や混色パターンが載ってるので、是非是非…!(私もこれを読んで黄色として使うスタイルに変えました)

ライトレッド(シリーズA)

この色は以前こちらの記事でご紹介した色です。

赤茶色としてセットに入っているのはバーントシェンナ(シリーズA)ですが、それよりも更に赤みが強く、かつ粒状化色でもない色。赤茶色として使うのはもちろん、薄めて肌色として使うのにも適しています。

もう少し暗めの方がいい場合はインデアンレッド(シリーズA)でも良いですが、ライトレッドよりも色が濃いので、肌色として使うには相当薄めないといけないかも…

バーントアンバー(シリーズA)

基本の茶色としてはド定番の色。ホルベインに限らず、どのメーカーでも大体ほぼ全てのセットに入っています。茶色も混色で作るのがとても難しいので、これ単色で買ってしまった方が精神衛生上とても良いです。これ単体で使うだけでなく、混色に使う事もあります。暗色を作る時のベース色として使えます。

色味自体は少し赤み控えめなシュミンケやクサカベの方が個人的には好きなんですけど、ホルベインのバーントアンバーも程よい色味で好きです。何よりパレットに固めても剥がれにくい(W&Nはよく剥がれ落ちたので…)粒状化色ではないのですが、紙目の荒い水彩紙だと濃く塗った部分は微かにシボシボ感が出てきます。

これを他の色に置き換えるとしたら、セピア(シリーズA)かイミダゾロンブラウン(シリーズB)辺りかなと思うのですが、どちらを選んでも色相がかなり変わってしまうので注意。どちらがいいかと言われたらセピアかな…

ちなみにメーカーによってバーントアンバーの性質が異なっていて、シュミンケやクサカベはなめらかなのですが、ホルベインやW&Nは少しザラッとします。ターナーは粒状化色扱いで、ザラザラ感もやや強め。

ペインズグレイ(シリーズA)

ホルベイン水彩総選挙 2020: 第11位/2021: 第5位

最後はみんな大好きペインズグレイ。こちらも「こっくりカラーセット」の時にご紹介済み。

黒の代わりに使う絵の具の中では最もド定番の色。少し青みがかったグレーで、青系を少し足せばインジゴの代わりとして使うことも出来ます。バーントアンバー同様、単色で使うだけでなく暗色を作る時にも使います。例えば、ペインズグレイにスカーレットレーキを混ぜると、ホルベインのラインナップにはないペリレーンバイオレット相当の色を作ることが出来ます。また緑系との混色でシャドーグリーンっぽい色も作れます。

ニュートラルチント(シリーズA)でもほぼ似た様な使い方ができるので、ペインズグレイの代わりにこちらを入れるのもおすすめです。ホルベインのニュートラルチントは色味が紫がかってて美しいです。

選抜18色で塗ってみた

というわけで、選んだ18色だけで塗ってみました。ちょっと重たいですすいません…

クリスマスクロケル(R)
メギド72のクリスマス衣装は2021年に出たものとジズの衣装が一番好きです

全色使う為に混色や重ね塗りを重ねて仕上げたので、かなり色が濁ってしまってますが…(涙)

スパッツなどのチャコールグレーっぽい部分はすべてマースバイオレット(粒状化色)+ペインズグレイ(ステイニング色)の混色なのですが、こうしてみた感じではザラザラ感も分離もほとんどわからないですね。

そして緑は全てビリジャンヒュー+何か(ペインズグレイだったりバーントアンバーだったりイエローオーカーだったり色々)の混色です。服の黒い縁はプルシャンブルー+ペインズグレイ。バーントアンバー・ペインズグレイ単色で使った部分はあまりないかも。

肌はライトレッドだけで塗っても良かったのですが、今回は少しイエローオーカーを足してジョーンブリヤンっぽい色を作って塗ってみました。今回初めて試した「混色で作る肌色」のパターンですが、これめっちゃいいな。黄色・金属部分はイミダゾロンイエローやイエローオーカーで下塗りして、上からキナクリドンゴールドを重ね塗り。金属部分の濃い所はキナクリドンゴールド+バーントアンバーの混色ですが、ここが一番濁ってる…( ;∀;)

所々に点在するライラックっぽい色は、シェルピンク+ミネラルバイオレットの混色。ただこの混色で作れる色はホルベインのライラックとはやや程遠い色で、どちらかと言うとクサカベのライラックに近いかも。

混色無しで塗ったのは髪の毛ぐらいで、あとはほとんど混色ですね。

ついでに今回使った道具もご紹介!

今回ホルベイン18色縛りってことで、せっかくなので使う道具もホルベイン縛りにしてみましたw

左から順番に

  1. 水彩紙: ストラスモア インペリアル水彩紙 SMサイズ
  2. ハイライト用ホワイト: アクリリックインク スーパーオペークホワイト
  3. ハイライト用ホワイト: 不透明水彩絵具<ガッシュ> パーマネントホワイト ※今回は未使用
  4. 筆: ブラックリセーブル700R 6号・0号
  5. 補助剤: オックスゴール

です。しかしストラスモアは残念ながら今年1月に廃番になってしまいましたorz( ↓ )推し紙だったので悲しい…

筆とホワイトについては過去記事でご紹介しています。よろしければコチラもぜひ。↓

一番右端のオックスゴールは、簡単に説明すると「絵具の弾きを抑えて、紙へのなじみを良くする(なめらかに塗れるようにする)」ものです。私は筆洗に3滴ほど垂らして混ぜて使っています。必須アイテムというわけではないのですが、絵具の弾きが強めのアルシュやW&Nプロフェッショナル水彩紙を使う時はこれがあると重宝します。

おわりに

ちょうど1年前に作った選抜12色だけで塗ったらくがきエランくん

前回のW&N編よりも長くなってしまった…! しかも初心者向けと謳っておいて、全然初心者向けになっていないような気がしてきました… ねこだからわかんにゃい! …ってなってたらすみません…

普段はW&Nメインに色々なメーカーの絵具を入れたパレット構成で制作しているのですが、久し振りにホルベインだけで塗ってみたら楽しかったです。気分転換には良いですねこれ。1年前にはこれよりも更に少ない12色縛りでチャレンジしてみているのですが(上画像)、案外12色でもいい感じに塗れたのでやっぱり楽しかったのでした。

水彩って「黒と白は使わない」「白の表現は紙の白で作れ」「混色するな重ね塗りしろ」などといった謎ルールや、透明水彩独自の技法の難しさなどで敷居が高いと思われがちですが、全然そんな事はないです。むしろ最初は「そんなの関係ねぇ」の精神でとりあえず触ってみる、というスタンスでいいのです。自分だって透明水彩初めてまだ2年のペーペーで、透明水彩の基本の技法全然マスターできてないですし…! …私は雰囲気で透明水彩を使っている(ダメじゃん)

W&N編同様、ある程度の混色は必要にはなりますが、上記18色で大体一通りのものは描けるかなと思いますので、この記事が少しでも参考になれば幸いでございます。

Contents