「インクに恋する紙」のノートで有名なフランスの紙製品ブランド・クレールフォンテーヌのコットン100%水彩紙。昨年末に日本でも購入できるようになった水彩紙ですが、ググってもほとんどレビュー記事が見つからず。
今回はこの高級水彩紙を、人柱も兼ねてゆるくレビューしてみることにします。ゆるめとした理由は、個人的には中上級者向けの紙だと感じたからです。ガチレビューは水彩上手な方にお任せします…!(人それを丸投げという)
クレールフォンテーヌについてざっくりご紹介
創業1858年、150年以上もの歴史を持つフランスの総合紙製品ブランド。現在は「エグザコンタ・クレールフォンテーヌ」というグループ企業のブランドとなっています。
本社のあるフランス北東部エディバルは、フランスを代表するミネラルウォーターの源泉地として知られ、また古くから製紙業が盛んな地方なのだとか。そのため環境保全にも力を入れており、FAO(国連食料農業機関)による「持続可能な森林経営」基準に認証された森林のパルプを採用したり、自社一括生産にすることで排水管理や自家発電を細かくコントロールするなど、環境への配慮にも積極的に取り組んでいるようです。
第二次世界大戦後の1951年に製造が始まった自社製の紙を用いたノートは、フランスでは世代を超えて愛される超ロングセラーの定番品。日本で言うならコクヨのキャンパスノートがこれに近い位置だと思うのですが違うかも…
日本での販売は、エグザコンタ・クレールフォンテーヌグループの経営傘下にある「エディションクオバディス」の日本支社として設立された「クオバディス・ジャパン」が行っています。
あんまり見かけない紙だが、どこで買える?
店頭販売の場合
インスタのクレールフォンテーヌ日本公式アカウントの投稿で確認できた所は以下。
- 世界堂
- デザインワークス
- ナガサワ文具センター本店(神戸)
他にも取扱しているリアル店舗あるよ! という情報をお持ちの方は教えて下さい…
オンラインの場合
ググると何故かアスクルの販売ページなどもヒットするんですけど(笑)、現状は世界堂オンラインかクオバディス・ジャパン公式ショップ(※楽天市場にも公式ショップがあります)のどちらかで買うのが確実です。
今回は楽天内にあるクオバディス・ジャパン公式ショップを利用しました。
公式ショップで購入すると、購入した商品に合わせて主要ブランドのリーフレットを同梱してくれますよ(初回だけかな…?)この時はフォンテーヌの他にロディアのドットパッドも購入したので、クレールフォンテーヌ以外にもロディアやエルバンも一緒に入っていました。…が、余計に物欲センサーを煽られてしまう…/(^o^)\
価格について
アルシュやW&Nほどではないにしろ、結構いい値段してます…。
サイズ | メーカー希望小売価格(税込) |
---|---|
18×26cm | 4950円 |
23×31cm | 6600円 |
26×36cm | 7700円 |
31×41cm | 10450円 |
…ハイ、この紙ブロックだとかなり高いです。
ただアルシュやW&Nとは異なる点として、リーズナブルなお試しパック(ポストカードサイズ: 10枚入り660円)が商品ラインナップにある点です。なので、気軽にお試しはしやすい紙だと思います。
ロディアタッチの水彩紙スケッチブックを買うという手もある(※荒目以外)
細目か中目で、かつそこまで大きくないサイズがいいのであれば、ロディアタッチ ウォーターカラーブックを買うという手もあります。
サイズ | メーカー希望小売価格(税込) |
---|---|
A6 | 3520円 |
A6ランドスケープ | 3520円 |
A5 | 4400円 |
A5ランドスケープ | 4400円 |
15×15 | 4620円 |
21×21 | 5280円 |
この商品は用紙にフォンテーヌ水彩紙を使用しています。根本の用紙サイズが違うので比較にはなりませんが、フォンテーヌのブロックタイプよりもちょっとだけお安く買えます。
ゆるくレビューしていくよ
だいぶ前置きが長くなってしまいましたが、本題へ参りますよ…!
紙目はこんな感じ。細目は見た目よりもだいぶツルツルしてますし、荒目は見た目以上に粗いです。
早速使ってみるも…
さて細目・中目・荒目とせっかく3種類あるので、たまたまデスクに置いてたテイルズオブ大全をパラパラ見ていて目に留まったレディアントマイソロジーから、カノンノたちをそれぞれに割り当てて描いてみようと思いました。
…んですが、いきなり色塗りに失敗しました。orz
乾くの早すぎるしものすごいエッジ出来るしで、なんかこれまで使ってきたコットン紙と気色が違いすぎるよ…! いつも使う紙がウォーターフォードやランプライトなので、荒目以外は思うようにコントロールできずパニック状態に。そして全くリフティング出来ないので更にパニクる。というか3枚いっぺんに塗ろうっていうのが間違いなんですけど。←
あまりにもあんまり過ぎるので1枚ずつ順番にリベンジすることに。
フォンテーヌ荒目(イアハート)
スキャン設定で紙目を拾う設定にチェックを入れずにスキャンしてしまってますが、それでも目の粗いのがわかるかなと思います。紙目の凹凸がかなりしっかり出ているので、分離色もきれいに出てます。また細目・中目と比較して乾くのがゆっくりだったので、にじみもぼかしも比較的コントロールしやすい感じでした。ただしこれはオックスゴールを使用した場合での話なので、オックスゴールなしだと少し広がりにくいかもしれない…
乾くのがゆっくりとは言っても、やはり他のブランドの水彩紙よりも乾くのはかなり早いです。同じく乾くのが早めだったストラスモアやキャンソンヘリテージよりもだいぶ早い。
あと紙目がめちゃくちゃ粗くてマルチライナーですらペン先が引っかかるので、線画はペンではなく鉛筆や色鉛筆で描く方がいいかもしれません。
フォンテーヌ中目(パスカ)
紙目はウォーターフォード細目と中目の間くらいで、中目にしては割とつるつるしてます。ペン入れのしやすさはランプライトにかなり感触が近いけど、ランプライトよりも若干紙目が細かいようにも思える。
中目を境に乾くスピードが一気に上がるので、塗り用とぼかし用の筆2本持ちで作業しないと、あっという間に定着してしまいます。ぼかしやにじみのコントロールは筆に含む水の量を少なめにするときれいに整えられると思いますが、オックスゴールを混ぜた場合はにじみのコントロールが利きにくくなりがちだったので、普段からオックスゴールを使う人は注意した方がいいと思います。中目はもしかしたらオックスゴールなくてもキレイに広がるかも。
フォンテーヌ細目(グラスバレー)
個人的には一番厄介な紙でした。他の2枚に比べて結構たわみやすいので、あまり水彩向きの紙ではないかもしれない…と感じました。広範囲のウォッシュは難しいので、細部まで描き込む人向けの紙ですね。この細目のみ、オックスゴール無しで塗ってます。むしろオックスゴール無い方がキレイに塗れるまであるw
ケント紙並みにツルッツルなので嫌な予感がしていましたが、中目よりも更に水の量を絞らないとまず水彩技法が使えないです。しかも透明水彩で塗ってるのに、塗ってるそばからすぐ乾き始めるので、どうしてもコピックで塗ったような筆致になる(涙)。使用した筆がコシがあるタイプのノルムだったからかもしれませんが、仮に柔らかいブラックリセーブルで塗ったとしても、乾くのが早すぎるのであまり変わらないような気もします…。
透明水彩以外だと、ZIGリアルブラッシュやトンボABTなどの水彩マーカーとは相性が良さそうです。ただコットン水彩紙は染料インクをすぐに吸い込んでしまうので、透明水彩と同じように塗るのはかなり難しいです。
3種共通の特徴
- とにかく乾くのが早すぎる。ただし荒目だけは乾くまでに若干の余裕がある
- 色の定着も早いのでリフティングはほぼ不可能。半乾きの状態であっても無理
- 早く乾く&色の定着が早いが、その分重ね塗りしても下の色が動きにくいのでそこはメリット大
- にじみはゆっくり広がる。ただし水の量が多いとコントロールはほぼ不可能
- 発色がかなり鮮やか。暖色系は特にきれいに出ている感じがする
- エッジ(デジ絵で言う水彩境界)が出やすい
特に中目や細目の場合、エッジや塗りムラを活かしたスタイルで行く方がストレスフルにならずに済むかも。
あと今回水張りなしで塗ってしまったので、水張りした場合だと乾くスピードとか色の定着速度とかどうなるか…という検証が出来ていないのですが、どうも風邪を引いた状態になりそうな気が…(水張り下手くそなだけでは…?)
(2024-05-19追記)水張りをサボらなければ「できる子」だ…!
ここまでに貼り付けたものはすべて水張りなしで塗っていたので「なんじゃこりゃー!」な結末になっていたのですが、ちゃんと水張りしたら万事解決するんだろうか…とふと思い、よく失敗するので普段面倒くさくてあまりやらない水張りをきちんとやってから塗ってみました。
えっ…なんかすごくコントロールしやすい…!
どうだろうどうだろう…と思いながら、いつもの塗り方にほぼ近い水の量で塗ってみたのですが、ウォッシュもグラデーションも思った通りに出来ました…! 色の広がり方がアルシュ細目とセザンヌ中目の中間くらいに変わりました。ただギザギザのエッジが若干出るので、オックスゴールは少し入れても良いかもです。
今回試したのは中目ですが、乾きややゆっくりめな荒目の場合だと、水張りを行うことで更に扱いやすくなるのではないかなと思われます。逆に細目は水張りしても変わらないかも…
水張りしてここまで変わるのなら、やっぱり中目が最も激アツですなあ。
まとめ: 中目か荒目がおすすめだが、初心者には扱うのが難しい紙
発色すごくキレイなんですが、やっぱり乾くのが早すぎるのがネックですね…。特に細目、あまりにも乾くのが早すぎるので、水彩技法はガッツリ使えないなぁと感じたのでした。むしろコピック向けなのでは感。
中目と荒目は水の量にさえ気をつけていれば程よくキレイに塗れるので、買うならこちらがオススメです。…が、最初に申し上げたように初心者向けの紙ではないです。コットン水彩紙にしては乾くのが早く、塗りムラなく仕上げようとすると難易度が上がるので、やはり透明水彩の扱いに長けた中上級者向けの紙だと思います。
個人的には中目が最もバランスが取れてると思うのですが、水多めのウォッシュを多用する自分の塗りスタイルには荒目があっているんですよね…。どちらを追加で買うか悩ましい話。
…と思っていたのですが、水張りをサボらなければ中目でもウォッシュで失敗しにくくなる…という事がわかったので、おかわりするならやっぱり中目かなぁ。高いけど…!