XP-Pen Artist15.6 Pro 購入&導入記

この記事は2019年にメインサイトで公開した記事を再録したものです(再録に当たり加筆修正しています)。なお、旧モデルの導入記事はこの先廃盤になる可能性が高いため、こちらには持ってきておりません。

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かゆい所に手が届いてくれなかった

私がArtist 15.6(旧モデル)を手放した理由を一言で言うとこれです。

2年前にArtist 15.6を人柱覚悟で購入した話を書いたのですが、それから約1年間使ったものの、使えば使うほどイライラ度がたまる一方になってきてしまい…。結局メルカリで売っ払って板タブ生活に戻ったのでした。

旧モデルでイライラした点

  • どんだけキャリブレーションを実施してもカーソル位置のズレは改善されず
  • 色の表現が今ひとつ(キャリブレーション補正してもiMac本体側の色からかけ離れてしまう)
  • 筆圧8192段階の割にはデフォルトで使うと非常に固いので、結局1/4位(約2048段階)にまで落とさないとまともに描けなかった(だったら2048段階の旧Intuos Pro使う方がマシじゃね…となった)
  • Painterだけ筆圧感知が頻繁に死にまくる(再起動やドライバアプデでも変わらず)

旧モデルを手放して1ヶ月ぐらい経った頃に、フルラミネーションで視差が小さくなって高性能になった上位モデルのArtist 15.6 Proが発売されたのですが、旧モデルで痛い目を見たのもあってこの時はすぐには買わずに様子見しました。実際出たなりの頃はMacだけでなくWindowsでもドライバの不具合多かったみたいですし…。

で、それから半年後のブラックフライデー頃にギフト仕様のホリデーパックが出たのですが、同梱されているペンが最新モデルになっていて通常版よりも若干性能が上がっているとの事だったので、1週間くらい悩んだ末に購入しました。その頃にはAmazonだけでなく、公式サイトや楽天でも買えるようになっていて、公式の方で買うと保証期間が18ヶ月になるんですが、ポイントを使うと公式で買うよりも若干安くなったので楽天で購入しました。ブラックフライデーセール中だったので3.1万くらいでしたが、通常版が4.4万くらい、旧モデルは4万弱で買った事を考えると「こんな値段で買ってしまっていいんだろうか…」という気にはなりました…

購入から到着まで

旧モデルを購入した時は中国からの発送だった事もあって1週間位待たされたのですが、現在は国内のAmazon倉庫から発送しているようで、楽天で購入してから3日位で届きました。Amazon倉庫発送という点に難色を示す人は一定数いると思われるので、公式サイトや楽天で買う人は注意した方がいいかもしれません。ちなみに公式以外ですとツクモPC Onesで取り扱いがあるので、実店舗が近くにあるという人は実機を見た上で購入するのもいいかもしれません。

で、到着した荷物はというと…

アカーーーーーーーーーーン!!!!!

緩衝材なしで届いた旧モデルの時よりはマシだし、最終的に貫通してなかったのでよかったけど、流石にこれは勘弁してくれ… てかこれ運送中で出来た傷か…?

セット内容

付属品は以下。

  • ペンデバイス
  • ペンケース(ペンスタンドにもなるフタ部分に替芯8本内蔵)
  • 3in1ケーブル
  • 延長ケーブル
  • 専用スタンド
  • クイックガイド&グリーディングカード
  • ACアダプタ(日本仕様)
  • 電源プラグ変換アダプタ4種(US/UK/EU/中国)
  • 二本指グローブ
  • クリーニングクロス
  • 2020年版卓上カレンダー

あと写真にはありませんが、スマホ用グリップと缶バッチがついてます。でもぶっちゃけこんなの付けられても使わないからいらない…

てか、旧モデルにはThunderbolt(miniDisplayPort)⇔HDMI変換ケーブルを付けていたのに、それを無くしたのはなんでや…。というわけで、HDMI端子がついていないPCやMacで使う場合は別途変換ケーブルが必要。特にMacの場合、2017年以降に出たモデルはUSB Type-Cで、それ以前はminiDisplayPortなので端子は確認しようね!

本体もホリデー仕様となっていて、ホイール部分にXP-PENのマスコットキャラクター「フェニックス」のイラストがプリントされています。…が、これも正直にぶっちゃけると余計な事すんじゃねぇ! …っていう。過去に出た別のモデルのホリデー版ではそんな事してなかったのに…。

液晶の方は旧モデル同様、既にデフォルトで保護フィルムがついています。旧モデルでのペーパーライクがあまりにも不評だったのか、貼られているフィルムはペーパーライクじゃありませんでした(耐久度もそこそこ)。あと発色がとてもキレイ。旧モデルと比較してもめちゃくちゃ性能が上がってます。

そして旧モデルとの最大の違いがスタンドが最初から付属している事(旧モデルには付属していなかったので別途購入しなければいけなかった)。…が、強度にやや難がある感&傾斜角度が固定されている点から見て、あくまでオマケ程度と考えた方が良さそう。ノートPC用スタンドかタブレット用スタンドを別途購入して使う方がまだマシ。

導入

現在入っているタブレットドライバのアンインストール

旧モデル同様、ドライバの競合が起こるので他のタブとの併用は出来ない為、まずこれまで使っていたタブレットドライバをアンインストール。同じXP-PEN製品であっても念の為アンインストールする方が安全。

接続→タブレットドライバのインストール

タブレットの接続方法は旧モデルと全く同じです。

3-in-1ケーブルの赤いUSBコネクタは電源供給用で、一応バスパワーでも液タブ本体は動くらしいので必須ではないようですが、それが出来るのは大容量電源積んだ自作PCぐらいなので、そうでない環境の場合は素直に電源供給させるようにした方が後々困らないです。特にノートPCはバスパワーで動かしたらあかんやつ(板タブですら結構電源食う)。

接続し終わったらドライバをインストール。なおMojave以降で使う場合はアクセシビリティの設定が必要になります。これは公式が詳しいインストール手順を日本語で公開しているので、手順通りに設定していけば問題なく動くはず。

キャリブレーション

デフォのままでも使えない事もないんですが、視差のズレによる誤タップや予期せぬ挙動を減らすためにも、キャリブレーションを行って座標検出を調整します。合わせ方は旧モデルと同じですが、フルラミネーションの効能で視差がほとんど少ないので、ペン先のほぼ真下にカーソルが来るように調整する程度でも十分描けます。

早速使ってみた

設定が終わったら早速使ってみるよ! 新機能などもチェックしながら触っていきます。

フルラミネーションディスプレイと傾き検知による視差の改善

Artist 15.6 Proに採用されているフルラミネーションディスプレイはiPad(Air 2以降)に採用されているものとほぼ同じ。フルラミネーション加工とは、液晶ディスプレイとカバーガラスの間の隙間を無くす事で光の反射や視差を軽減させる加工の事で、ワコムでは「ダイレクトボンディング」と呼ばれているアレと同じヤツですね。そしてペンには±60°の傾き検知を採用。これにより「アナログで描いている感」がより感じられるようになりました。

8個になったショートカットキーと新たに実装されたダイヤルインターフェイス

ショートカットキーは旧モデルの6個から2個増えて8個に、そして新たにダイヤルインターフェイスが追加。

このダイヤルインターフェイスが地味に便利で、くるくる回せばズームイン/ズームアウトしてくれます。…が、自分の環境ではデフォのままではズームインせず(※ズームアウトは動く)、エクスプレスキーの設定画面でファンクションキー(S1)の一番右側を「PS ズームイン/ズームアウト」に変更しないと正しく動作しませんでした(それでもPainterでは正常に動作しない)。

これは液タブのファンクションキーの設定がUSキーボード基準になってるからこういう挙動をするらしいという話を聞いた事はあるのですが、詳しく検証する気はないので気になる方はグーグル先生にお尋ねください。

ペン周りは大きく改善されている感じがする

ペンケースのキャップ部分がペン立ても兼ねています。そうだよこれだよ私が求めていたペン立ては…!(旧モデルのペン立ては自立できないヤツだったのでマジクソだった)肝心のペンは、この旧モデルのペン(03S→後にP05S)がおよそ使いやすいとは言えなかったので不安だったのですが、Intuos proとほぼ同じ握り心地&描き心地だったのにはちょっと感動しましたね。

この写真ちょっと比較しづらいんですが、ペン先がワコム製タブレットと似たような細さになってるんですね。旧モデルのP03/P05Sがやや太めのペン先だったのですが、それと比較してもかなり細いです。最近登場したと思われるPA1(板タブ用)/PA2(液タブ用)ペンはワコムのプロペンを意識している感じがします。ただペーパーライクフィルムだと1枚描き上げたら即芯交換になりそうな勢いですけど。

よく言われるペン先の沈み込みは特に気にならなかったです。筆圧感知に関しても、旧モデルがものすごく柔らかくしてやっと普通に描けるレベルで精度がよくなかった(特にPainterでは微妙な筆圧の差を読み取れていなかった)のに対し、Proの場合はデフォルトのままだとやはり固いものの、少しだけ柔らかくするだけでも気持ちよく描く事が出来たので、ペンの精度もドライバの精度も改善されている感じがしました。また旧モデルでの懸案事項だった「Painterでだけ筆圧感知が頻繁に死ぬ」現象は改善されたように思われます(Painter2020体験版で確認)。ただ、小さいストロークをすばやく重ねると若干の遅延が発生するのは直ってない模様。

1枚描ききってみた

※もう少し画質がまともなバージョンはメギド72公式ポータルの「2周年記念ファンアート展」にあります

今回はクリスタを使用しましたが、旧モデルで描いていた時と比較してもかなりストレスを感じる事なく描ききる事が出来ました。というか、やっぱり液タブ使うとクリスタと仲良く出来る気がしますw

あとiMac本体との色味の差が少ないので、作業途中で色味のチェックをしなくてもそこまで変な色にはならないのは大きいメリットじゃないかなと思います。

個人的にもにょる事とか

購入特典のopenCanvas7

ぶっちゃけます。ArtRageとどちらかを選べるとはいえ、openCanvasじゃないといけない理由って何だろうな?

openCanvas(以下oC)はWindowsで描いてた時に使っていましたが(2〜5.5 Plus)、残念ながらお世辞にも軽くて使いやすいという部類ではなかったです。しかも無料で使えるメディバンペイントである程度やりたい事は出来るようになった今、敢えてoCを使うメリットが見当たりません。またoC自体Windows専用なのでMacの場合はBootCampが必要なのだけど…

わざわざBootCampしてまでoC使うか?

…って話です。ぶっちゃけ使わない。OSも別途用意しなきゃならんし、んなくっっっそめんどい事するくらいならサブスク500円(2年使えば無制限ライセンス付与)でクリスタ使うか、メディバン使う。

Windows環境にしても、印刷用途でイラストを描くのでなければoCよりも軽いSAIやPixiaという選択肢がありますし、漫画も描きたいけどなるべくコストかけたくない…っていう場合なら無料のメディバンペイントがあるじゃないか!(それでかゆい所に手が届かなくなったらクリスタ)…となるわけで、やはり特段oCじゃなければいけない理由が見当たりません。

ちなみにpixivでタグ検索してみると、クリスタ(CLIPSTUDIOPAINTで検索)で描いた絵が12万件位あるのに対し、oC(openCanvasで検索)で描いた絵は2000件位しかヒットしなかったです。クリスタ付けろとは言わないけど、もう少しpixivでの使用ツールのシェア率を考慮した方が良いのでは。

pixivプレミアム3ヶ月分は短くない?

pixivプレミアム3ヶ月分がつく特典は終了しています。以下の話はまだ特典をつけていた頃のお話になりますのでご了承ください。

指定機種のみだと思うんですが、購入特典でoC7に加えて、pixivプレミアムが3ヶ月分無料で使えるようになります。

pixivプレミアムとは

月額550円の有料サービス。契約すると以下の機能が解放される&特典がついてきます。

  • キャプション内でのHTMLタグ(インラインCSS含む)・改行の使用
  • 投稿画像の差し替え
  • pixiv仕様のCLIP STUDIO PAINT DEBUTのサブスクリプションライセンス

更にクリスタDEBUT→PROへの優待価格でのアップグレードも可能(EX不可)。

が、クリスタDEBUTが付いてくる事や月額550円かかる事を考えると3ヶ月は短いと思うんですよね…。これを付けるんだったらoC7を無くして、pixivプレミアムを3ヶ月→1年にした方がいいんじゃないですかね。

あと、既にpixivプレミアムを10年以上契約している身からすると、今更3ヶ月無料分を取得した所で特にこれといったメリットを感じられないなと。

Mac × Corel Painterでの動作検証が相変わらずいい加減過ぎる

タブレットドライバのバージョンによっては、相変わらずPainterでのみ筆圧感知が死にます(タブレットドライバ2.1.7で確認、その前の2.1.6では問題なく筆圧感知します)。それ故にPainterでも筆圧感知が死なないバージョンのタブレットドライバを保険として手元にアーカイブを持っていなければならないという。当然ながら新しいバージョンが出てもバージョンアップ出来ないという。Painter対応を謳うならちゃんと動作検証しやがれください。

なお傾き検知によるストローク幅の可変が機能しないのは旧モデルの頃から変わらず放置されている模様。クリスタとかなら別に問題ないけど、PhotoshopやPainterで動かないのは流石に致命的すぎる(※Windowsでは問題なし)。

その後、macOSをBig Surにした上で3.0.9_210322版をインストールしたところ、Painterでも筆圧感知がちゃんと動くようになりました。これまでv3系にしてもPainterだけは筆圧感知が死んでいたのですが、これで古いドライバを使い続けなくてもよくなったのは大きいです。…とはいえいくつかバージョンアップしていくうちにまた再発しそうなので楽観視してませんけど。

まとめ: Artist15.6 Proのメリットとデメリット

メリット

  • 相変わらず驚きの低価格。Cintiq Pro 16に迫る性能を持ちつつ、通常版の定価(4.4万)で見てもCintiq pro 16の約1/4で買えるのはやはり強い
  • フルラミネーション加工と傾き検知の恩恵で、アナログで描く感覚により近い為作業がしやすくなる
  • ペンデバイスの充電がいらない(これは最近の中華タブではようやく主流になった)
  • この価格帯にしては発色はそこそこキレイ(旧モデルよりもさらに性能が上がっている)
  • 接続ケーブルが3-in-1なので机周りがかなりスッキリする

デメリット

  • フルラミネーション加工と傾き検知のお陰で視差が少なくなったとはいえ、全く無くなったわけではない(体感7割あるかないか)完璧に無くしたいならCintiq Proを買うしかないので、やはりプロユース向けではない
  • 変換ケーブルが付属していないので、HDMI端子がないPCやMacで使う時は別途変換ケーブルを購入する必要がある
  • スタンドはあくまでもオマケ程度(角度固定だし剛性もあんまりなさ気なので実用するには不安)
  • 相変わらずドライバのサイレントアプデしてるのだけど、誰も気がつかないからホントやめた方がいいと思うよ…
  • 購入特典でopenCanvas7はニッチすぎる。だったらArtRageだけでええやん…

購入特典のoCに関しては旧モデルを買った頃からめちゃくちゃもにょってて、それが今も変わってなかったので今回敢えて触れてみましたが、それを除けば旧モデルよりも満足度が非常に高いです。どちらかといえば初めてデジ絵に触れる人向けではなく、既にお絵描き出来る環境持ってて板タブや古い液タブからの乗り換えを検討している人向け(※ただしプロユースとして使うにはやや厳しい)かなと。もちろん初めてデジ絵に触れる人が買っても別途アプリを用意できれば全く問題ないですが。

ただ、中華タブ全般の特徴としてドライバの作りが甘かったり、筆圧の調整が難しかったりするので、基本的にある程度PCの知識がある人ではないとかなり辛いと思います。設定周りを見てもおおよそ初心者に優しい作りにはなっていません。それさえクリア出来れば快適お絵描き生活を送れると思います。旧モデルと比べて致命的なデメリットが無く、それでいてワコムの液タブに近い性能を持っていながらお値段が控えめなので、特に旧モデルからの乗り換えを検討している人にはオススメです。

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