はじめに
1990年代後半頃から、プロ・アマ問わず爆発的に使われるようになったコピック。デジタルイラストが主流となった昨今でも、手軽に使える画材として多くの絵描きやデザイナーに愛用されている画材です。
とはいえ、「学生時代コピック憧れだったけど、近くに取り扱ってる所がなかったor高くて手が出せなかった…」という層はいるのではないかと(30代以上だと結構いると思うのですがどうだろう)。
そこで今回は、「オトナになった今だからこそ、憧れだったコピックに手を出したい!」という方の為に、コピックの基本的なお話を書いていこうかなと思っております。私がアナログで描いていた頃からずっと使ってきた画材なのでどうしても重量級の思い出補正が入ってしまうのですが、どうか生暖かい目でお付き合いくださいませ。
参考サイト
今更聞けないコピックのこと
コピックとは
今更な話ですが、コピックとは.Tooで開発されたアルコールマーカーの名称です。
コピックはTooグループで開発したアルコールマーカーの名称であり、用紙類やエアブラシなどの製品を含むブランド名です。
コピックのマーカーは358色ものラインナップを持ち、品質の高さや繰り返し長く使用できる点などが評価され、
デザインの作画、イラストレーション、漫画の着彩、クラフトなど様々な分野で活用されています。
1987年から発売を開始し、現在は世界70カ国以上で販売しています。
What is Copic? コピックについて コピックについて – コピック公式サイト
発売当初は全71色展開でしたが、後にどんどん新色が追加されていき、現在では358色にまで展開しています。
コピックの特徴
主な特徴としては以下。
コピー機のトナーを溶かさない
コピックは元々の開発コンセプトが「コピー機のトナーを溶かさないで使えるデザイナー向けマーカー」で、コピックという名前の由来や本体ボディが灰色なのもここから来ているのだそう。
繰り返し使える
ニブ(ペン先)の交換とインクの補充が可能になっており、定期的なメンテナンスにより本体を捨てずに使えるというメリットがあります。大事に保管していれば10年以上は持ちます(実際私の手持ちにも20年選手が結構います)。
…とはいえあまりにもボロボロなら素直に本体を買い換えるべき。
アルコールベースの染料インクを使用
コピックが手軽に使える一番の理由はこれだと思います。主なメリットは以下。
- 速乾性に優れているため手や紙が汚れにくい
- 発色が鮮やかで、混色しても濁りにくい
- 紙にダメージを与えずに、手軽に混色や重ね塗りが可能
ただ3に関しては、用紙によっては激しく裏写りしたり紙がベコベコになったりするので、やりすぎに注意。
コピックマーカーの種類について
さてここからはマーカーについて見ていきます。
コピッククラシック
- 1987年発売
- 全214色
- 単品価格418円
昔はコピックと言うとこのモデルの事を指していましたが、数年前に名称が変わって「クラシック」がつくようになりました。
主にデザインの現場で使われるタイプで、ペン先は幅の広い線が引けるブロードニブと、細密描写に最適なファインニブの2種類。後述のスケッチやチャオについているスーパーブラシは標準では付いていません。ブラシを使いたい場合、オプションでクラシック専用のブラシニブが販売されているので、これをブロードニブと交換して刺す事でブラシが使えるようになります。
コピックスケッチ
- 1993年発売
- 全358色
- 単品価格418円
どちらかと言うと、今はこちらのモデルがコピックの主流。スケッチ発売当時のCLAMP作品(X・聖伝・レイアース辺り)を通ってる人なら、まず知らない人はいないだろうと思われます。そしてこの頃から、商業漫画でもコピックを使ったカラーイラストが徐々に主流になっていきます。
ニブはミディアムブロードと、コミックイラストに最適なスーパーブラシの2種類。コシのあるスーパーブラシは、モノクロ原稿でいうツヤベタと似た感覚で塗れて、塗りムラも目立ちにくいので、気づけばこちら側が先にボロボロになりがち。
因みに発売時期によってボディのデザインが違います(この写真だと上2本が旧デザインで下2本が現行デザイン)。
コピックチャオ
- 1998年発売
- 全180色
- 単品価格275円
コピックスケッチから使いやすい色を厳選して、手に取りやすい価格とサイズにしたエントリーモデル。
インク容量が全ラインナップで最も少なくなっているので、よく使う色はスケッチで買う方が経済的です。ニブ仕様も使い勝手もスケッチと全く変わらないのですが、エアーブラッシングシステムには対応していない(ボディが細いのでグリップへのセットが不可能)ので、エアーブラッシングシステムの購入を検討している場合は要注意。
ただ細身のボディは決してデメリットばかりではなく、スケッチやクラシックと比較して置き場所を取らないというメリットもあります。また使いやすい色のみの展開にしている事で色選びで迷いにくくなっており、初めてコピックに触れる人が買うのには最適ではないかと。
コピックワイド オリジナル
空ペンのみの展開で418円。ニブ幅が21mmあるワイドタイプのコピック。以前はインクの入ったタイプも全36色で展開されていましたが、空ペン以外は全て数年前に廃盤になったようです。主な用途はレンダリングやパース背景向けで、別途補充用インクを入れて使用します。
コミックマーカー(※廃盤品)
既に販売終了済でもう市場には出回っていませんが、手元にまだ現役で使える色が残っているのでついでに紹介。
1995年〜2015年まで販売されていた製品で、その名の通りコミック用途向けに発売されたコピックスケッチに似たシリーズです。画材店だけでなく、書店の文房具コーナーでも取り扱っていた所があったので、当時最も手に取りやすかったコピックだったと思われます(私が初めて買ったコピック製品もこれでした)。
全72色展開で、ブラシはスーパーブラシとミディアムラウンドの2種類ですが、当時から専用ニブの販売はありませんでした。スケッチ・チャオ用のブラシニブに交換出来るのかな… また廃盤に伴って近似色・同一色リストを公式サイトのFAQで公開していますが、近似色すらない色もあるので注意。なお、コピックスケッチ同一色の場合はそのままインクを補充して使う事ができます。
マーカー以外のコピックブランド製品
ここからはマーカー以外のコピック製品を簡単に紹介。
コピックインク
- 全358色
- 単品価格418円
コピックシリーズ共通で使える補充用インク。以前は「バリオスインク」が補充用インクとして販売されていたのですが、こちらは残念ながらカラーレスブレンダーの200mlボトル(後述)を除き生産終了になってしまいました。そしてコピックインクになってから内容量がバリオスインクの半分になってしまったので、ただでさえ良くないコスパがさらに悪くなった気がします…
良い点を上げるとしたら、専用ブースター無しで直接インクを補充できるようになった事と、今流行りのアルコールインクアート用として使える事ぐらいだろうか。
コピックバリオスインク カラーレスブレンダー
200mlボトル/1650円。カスタムカラーの調合やマーカー本体の清掃などに使えるお徳用サイズ。ただしこれ単体では0番への補充は難しいので、インクの補充目的ならコピックインク0番を使ったほうが良いです。
コピックマルチライナー
乾くと耐水性になる水性顔料インクを採用しているドローイングペン。ラインナップは以下。
- 無印(オーソドックスなミリペンタイプ)
- マルチライナーSP(カートリッジ交換型・黒のみ)
- カリグラフィーブラック(カリグラフィーペンタイプ)
- 画箋筆(いわゆる筆ペンタイプ)
- ドローイングペンFシリーズ(万年筆タイプ) ※このモデルのみ非耐水性
ミリペンタイプが最も手軽&一番手に入りやすいのでオススメ。
エアーブラッシングシステム
いわゆるエアブラシ。コピッククラシックかコピックスケッチをつければ簡単にエアブラシを楽しめて、色の交換もコピックを交換するだけでOKという手軽さ。コンプレッサーの有無で使えるタイプが分かれるのだが、「エア缶直結タイプ」が一番コンパクト、かつ比較的ローコストでオススメ。
ただしコスパは微妙(案外すぐにガスが無くなる)。
コピック オペークホワイト
- 10ml/880円
- 6ml・ブラシ付き/880円
コピック専用に開発されたホワイトですが、隠蔽力が高いのでモノクロ原稿でも使えます。ただしインクが固まりやすいので定期的に撹拌してやらないと死ぬ(経験者は語る)。
専用紙
コピックに関しては白無地であれば基本どんな紙でもOKなのですが、一応コピックに適した紙は発売されています。因みに公式は
- コピックペーパーセレクション 特選上質紙
- コピックペーパーセレクション カスタムペーパー
以上2種を初心者にオススメの紙として紹介しています。
この絵は「コピックペーパーセレクション 特選上質紙」を採用したコピックスケッチブックに描いてます。
真っ白な紙ではないので発色はやや控えめですが、どんなに重ね塗りしても紙が傷まないし、変ににじみすぎたりしないので比較的扱いやすいです。ただ、初心者には癖があって扱いにくいのでは…(マルチライナーがめちゃくちゃ滑る)。
収納ケース
プラスチックタイプと、持ち運びに便利なウォレットタイプ、ディスプレイも出来るワイヤースタンドの3種類ありますが、ぶっちゃけ無印良品のナイロンメイクボックス・Mサイズの方が収納力に優れているので、これは特にオススメしないです。
デメリット
コピックは手軽に使える画材ではあるのですが、当然デメリットもありますよ。
導入コストが高い
チャオで揃える分にはあまり気になりませんが、クラシックやスケッチで揃えるとなると話は別です。12色セットだとプラス500円でターレンス エコラインカラーインクの10色セットが買えますし、24色セットでドクターマーチンのカラーインク14色セットが1つ買えます(※いずれもAmazonで購入した場合)。マーカーイラストを始めたいが、コストを極力低めに抑えたい人にはコピックはちょっと厳しいかもしれません。
とはいえマーカーイラストはコピックの専売特許ではないよ!(←ここ重要)代替品は後述します。
コスパは特段優れているわけではない
特に透明水彩やカラーインクを使っている人がコピックに移行しようとすると、まず躓くのはここかなと。毎日ガッツリ塗る人じゃなければ気にしなくても良いのかもしれませんが、大判イラストを毎日数枚描くレベルだと速攻でインクが無くなります(特にチャオ)。
あとバリオスインクの時は本当にコスパが良かった(クラシック・スケッチ1本分の値段でインク容量がスケッチ約13本分相当だった)のですが、コピックインクになって内容量が減った(スケッチ約6〜7本分相当)ので、残念ながら昔ほどコスパは良くないです…。
アルコール臭がややキツめ
主にアルコール臭が苦手な人向けの注意喚起ですが、一般的な油性マジック(マッキーとか)よりもアルコール臭が若干きついです。使用後1時間位は臭いが部屋の中に残るので、使用中は定期的な換気をオススメします。なお、使用中気分が悪くなったら作業を中止しましょう。
コピックインクでアルコールインクアートをする場合や、エアーブラッシングシステムを使用する際は常時換気しましょう。当然ですが使用中は火気厳禁!
どこで買うのがベスト?
最適解はトゥールズでしょうねえ…。基本的に定価販売なので他の画材店と違ってお得に買えたりはしないけど、やはり公式ストアの安心感は半端ない。次点は赤ブーイベントやコミケの企業ブース(コミケだとイベント限定品の販売やくじ引きとかもやったりするらしい)。なおアニメイトはその次の次の次くらいで、個人的にはあんまりオススメしません。
オンラインだとAmazonかゆめ画材さんとか、割と有名どころであれば結構割引してるのでオススメなのだが、Amazonでの画材購入は輸送中の破損トラブルに結構遭いやすい(バラ買いした透明水彩のチューブが潰れて届いた事があった)ので、神経質な方は注意。あと世界堂さんではコピック製品の取り扱いがありません。他の画材と一緒にコピックを買う時には注意が必要かも。
コピックよりも安いマーカーってないの?
先にも書きましたが、マーカーイラストはコピックじゃないといけないって事はないです。というわけで代わりになりそうなものをさらっとご紹介。…ここコピックカテゴリだよね? などというツッコミはなしでよしなに。
マービー ルプルーム パーマネント
昔「マービーマーカー」っていう、コピックに似た発色で1本90円くらいの水性ペンがあったのですが(自分はついぞ買わずに終わってしまった)、そのマービーマーカーの発売元が開発したアルコールマーカー。1本180円/全168色。親会社が事務系文具大手の内田洋行なので、画材店だけでなく事務キチや東急ハンズ(一部店舗のみ)などでも買えたりします。人によってはコピックよりも手に入りやすいかもしれません。
使用感もコピックと遜色ないらしいのですが、ペン先はブラシタイプのみなので、広範囲を塗るのはちょっと苦手なのかなという感じ。気になるのでそのうちセット購入してみようかな。あとペン先がつぶれにくいことに定評のあるドローイングペンも人気。
Ohuhu イラストマーカー 筆タイプ
全216色。1本あたり80円というアホみたいな低コストのアルコールマーカー。お絵描き系YouTuberによる案件動画が結構出てるので知っている方もいるかも。因みに筆タイプは2種類あるのだけど、筆タイプの反対側のブロードニブの太さの違いで2種類に分けられてるっぽい。ただし単品での販売はしていないので、インクが切れたらその近似色をコピックで代替するしかないです。
Amazon見てると色々なセットがこた混ぜになって上がってるんですが、初めて買うのであれば「日本の伝統色 基本色+濃淡色 80色セット」が色のバランスが取れてて良いと思います。
Ohuhuマーカーの紹介動画は結構あるのだが、一番観られてるのはなつめさんちの動画じゃなかろうか。
こちらの動画では日本の伝統色セットが使用されています↓
匠彩(SHOSAI) イラストマーカー
※公式サイトがセキュリティ的にアレそうだったのでAmazonのストアトップを貼り付けてます
こちらのマーカーもなつめさんち繋がりなんですが(マーカーのセット配色を監修している)、全72色という少ないカラーラインナップでありながらも、使いやすい色が揃っている印象。セット販売(36色・40本セット/72色・80本セット)のみで、単品での販売はありません。
セット色に対して入っている本数が合わない(多い)のは、よく使う色とブレンダーを多めに入れているから。そしてこちらも1本あたり50〜60円ほどというドン引きレベルの超ローコスト品。72色・80本セットでも5000円で買えてしまうのはスゴいな…
ただこのメーカー、トレス台の方があまりにも有名すぎて、アルコールマーカーがあるって言われてもピンとこない人の方が多そう。因みに自分はトレス台の方が気になりつつも、未だに購入には至っておりません…
オマケ: 100均のマーカーってどうなん?
手軽に買える反面、(決して駄目なレベルではないが)品質は100均クオリティなので、個人的にはオススメしないです。色数もそこまで多くないので、色の幅が広がりにくいのではないかと。マーカーがどんなものか試しに使いたい…という用途で数本買う分には良いのですが、全色オトナ買いはオススメしません。
まとめ
今回はコピックについてどんな種類のマーカーや周辺アイテムがあるかを見ていきましたが、ちっとも初心者向けじゃなくなっているような…(お前の記事は毎回そうだろ! っていうツッコミが飛んできそう)
コピックだけで考えた時、スケッチにするかチャオにするかで絶対迷うと思うのですが、初めのうちは導入コストの面から見てチャオがおすすめです。まずは12〜24色セットからスタートして、欲しい色や気になった色を後からチャオかスケッチでバラ買いするスタンスでも全然大丈夫。しかし沼るとお金がかかる画材なので、のめり込み過ぎないように注意ですw
ご清聴有難うございました。