透明水彩を始めたのがきっかけで数十年ぶりにアナログカラーイラストを描くようになってから、主線をどうするか問題と共にどうしたもんか…と悩むことになったのが、ハイライトなどで使うためのホワイトです。
そこで、画材を問わずに使えるホワイトを探すために、数種類買って試してみることにしました。
今回新規に買ったもの&以前から所持しているもの
試したホワイトはこちら。立川のピュアホワイトとW&Nのチタニウムホワイトは以前からあったもの。
実は本命はリキテックスリキッドのチタニウムホワイトだったんですが、Amazonで買おうとしたら「最低注文数は4個からです」って怒られたので、泣く泣くホルベインのアクリリックインクやドクターマーチンのボンベイを代わりに購入したという経緯があります(涙)
コピックオペークホワイトは数十年前から使っているものを今回発掘したのですが、今回新規に買い直しました。この辺の事情については後述します。
チューブ(絵の具)タイプ
ウィンザー&ニュートン プロフェッショナル透明水彩 チタニウムホワイト
この価格帯の透明水彩絵の具の場合、通常セット品に入る白といえば半透明のチャイニーズホワイトがほとんどなのですが、W&Nの場合は不透明のチタニウムホワイトがセット品に入っています。チャイニーズホワイトとチタニウムホワイトの違いは顔料なのですが、半透明で隠蔽力の弱めなチャイニーズホワイトは混色用途に向いているのに対し、不透明で隠蔽力のあるチタニウムホワイトはどちらかといえば描画用途に向いています。
後述のガッシュやアクリル系絵の具に比べると隠蔽力は流石に劣るのですが、意外にもはっきりと発色します。淡めに塗った透明水彩イラストのハイライトならコレでも行けそうかも(なお耐水性)
ホルベイン アーティストガッシュ パーマネントホワイト
15mlで380円。なお、日本色 彩シリーズに「胡粉色」という白がありますが、中身は全く同じ色。透明水彩で描いている方がハイライトで白を使う時によく選ばれているのがコレか、アクリルガッシュの白らしいですね。
透明性記号が「不透明寄りの半透明色」となっていますが、透明水彩とは違い顔料の濃度が濃いため、透明水彩のチタニウムホワイトと比べると白の濃度が違います。確かに透明水彩のハイライトには最適かも(なお耐水性)
ぺんてる アクリルガッシュ
サクラやぺんてるのものは、安価かつホームセンターでも入手できるので手軽に試しやすいですね。しかしあくまでも学童向けなので、同じアクリルガッシュならやっぱりターナーやホルベインなどの方が良いです。
曲がりなりにもアクリルガッシュなので隠蔽力はあるんだけど、絵の具そのものは軟らかいのにそのままじゃ伸ばしにくい。かと言って水でゆるくすると薄くなってしまう。あまりにも塗りにくいので調べたら、アクリルガッシュの場合は「絵の具:水=1:1」にすると使いやすくなるらしく、根本の根本から使い方を間違っていた模様。orz
それでも色薄く見えるんだよなあ…まさかと思うが実はジンクホワイトだったりとかしないよね君…
ターナー U-35アクリリックス チタニウムホワイト
20mlで大体300円前後。アクリル絵の具ではあるけど、どうやらアクリルガッシュとは違う使い方をするものらしく、普通に塗っても隠蔽力がやや弱めでした…
U-35は透明性のあるタイプなので、水で薄めて透明水彩っぽい塗り方が出来たり、ペタペタ塗って油絵っぽくしたりするのが得意なアクリル絵の具。そりゃ隠蔽力も強くない訳だ…
でもU-35そのものはちょっと使ってみたいなとは思ってるので、セット品買おうかな…
インクタイプ
タチカワ ピュアホワイト
1本250円。太さは0.5mm/0.8mm/1.0mmの3種類ありますが、0.8mmが一番使いやすいと思います。
手元には0.5mmもあるんですが、最初からインクの出があまりよろしくなくて、まだインクが半分位残っているにも関わらず全く出てこなくなってしまいました…。セットになったものもありますが、こういうケースが多々あるので0.8mmか1.0mmどちらかを単品で購入するのがおすすめです。
広範囲のベタ塗りには向きませんが、隠蔽度はそこそこなので、ペンタイプならこれが一番オススメ。
Dr.Ph.Martin’s ボンベイ・インディアインク ホワイト
30ml入り。Amazonでの販売価格は1,452円。公式サイトでは日本円で800円ほどのようですが、実際にそこで購入した場合でも送料やら手数料やらで結局同じ位の価格になるのではないかと。
ボンベイ・インディアインクについては以前リキテックスリキッドをご紹介した記事で少し触れています。
乾くと耐水性になり、耐光性にも優れる顔料ベースのインク。カラーインクで描く漫画家が最も多く採用している、同社の「ラディアント」シリーズの欠点をほぼ完璧にカバーしているシリーズですが、色によってはラディアントよりも粘性があります。透明色インクですが、黒と白は不透明になります。白が不透明色ってことは、これホワイトにも使えるのでは…? と期待して購入したのですが… なんか思ってたんと違う。
つけペンだとまあまあ隠蔽力はありそうな感じもしますが、筆だと普通に塗った場合は透明水彩のチャイニーズホワイト相当の隠蔽力しかない気がします。隠蔽力を高くしたいなら重ね塗りするか、相当濃く塗らないとダメそう。
ホルベイン アクリリックインク チタニウムホワイト/スーパーオペークホワイト
各100ml入り。お値段はチタニウムホワイトが1,045円(シリーズA)、スーパーオペークホワイトは1,430円(シリーズC)。フルイドタイプとも迷いましたが、つけペンでも使う事を想定してこちらに。
悩みに悩んだ末、チタニウムホワイトの方を先に購入したのですが、なんか思ってたんと違う…となってしまったので、後日「白すぎる白」スーパーオペークホワイトを追加購入。コレが凄かった…!
どちらも同じ量&筆圧になるように塗っているのですが、隠蔽力全然違いすぎる…! 因みに透明性記号・耐光性記号・顔料はどちらも同じ。どういう技術で製造しているのか気になる…
コピックオペークホワイト
私がカラーイラストをコピックメインで描いてた頃からお世話になっているホワイト。左が旧仕様のもので、右が現行版(10ml入り880円)です。値段は30ccだった頃も似た様な価格だった記憶が。実質値上げかこれ…。なお筆付きもあるけど、更に量が少なくて粘度も高め、そのくせ値段も同じという代物なのでおすすめしません。
ところでこのコピックオペークホワイト、左と右とで違いがあります。左の方を使っていた当時、粘度が高かったように記憶しているんですが、右の方ではサラサラな液状になっていたので驚きました。…実はこの商品、原料の調達過程で問題が発生して5年前に一時休売になったのですが、販売再開時にすべて変更になった様ですね。
ちなみに左の方は長らく使っておらず、何故か蓋がされていないままの状態で見つかりましてw もうカッチカチに固まっていたので、ホコリを被っていた部分を削り、なんとか使える状態にまで熱湯で溶かしてから使ってみたのですが、流石に経年劣化は否めませんでした…
左の方はどうしても完全に溶けきってないのでつぶつぶが残ってますね…。隠蔽力は右の現行品と同じ位は残ってるような気もします。が、もう20年以上も前のものなのでおとなしく廃棄することにします…
その他のホワイト
Dr.Ph.Martin’s ブリードプルーフホワイト
30mlで1,600円ほど。
昔からある超有名なホワイトで、プロの漫画家御用達のヤツですね。過去に日本で購入出来なくなった時期が何度もありましたが、現在はAmazonで購入できるようになっています。
さすがプロ御用達なだけあって、隠蔽力は他の追随を許しません。粘性がとても高いので、使う分を別の容器に取り、少量の水で溶かしてから使用します。そのため薄めずにつけペンで使うのは無理。
Dr.Ph.Martin’s ペンホワイト
30ml入り。Amazonでの売価は1,937円。
前述のブリードプルーフホワイトの欠点だった「粘性が高くてつけペンだと水で薄めないと使えない」をカバーしている商品。隠蔽性はブリードプルーフホワイトと比較して多少下がるようなので、モノクロ原稿には使えないと思った方が良さそうです。しかし薄めずにそのままつけペンにつけて使えるのは大きいです。
呉竹 ZIG Cartoonist WHITE INK 30
30g入りで、メーカー希望小売価格は605円。
こちらも使う前に少量の水で溶いてよく混ぜてから使うタイプのようです。このことから、ブリードプルーフホワイトと同じレベルの隠蔽力を持っているのではないかと推測。こちらはAPマークなので、ブリードプルーフホワイト使いたいけど毒性気になる…という方にはおすすめかも。
問題はInktoberの特設ページで紹介されてるくせに、店頭ではなかなか見かけなかったりする点かな…
呉竹 ZIG Cartoonist 白筆ぺん 極細
本体660円、専用カートリッジ275円。
一度だけ購入して使ったことがあるのですが、個人的には全くダメな奴でした…。発色はキレイで、インクの出方が良い時には描きやすさもそこそこなお品なのですが、如何せんインクの出方が気まぐれすぎる。あと固まるの早すぎ。そのくせ水性染料インキとの相性は良くない(※同じ染料でも油性のコピックやルプルームなどは問題なし)。
同じ呉竹のZIGシリーズに「リアルブラッシュ」っていう、まさに水性染料を使っているカラーマーカーがあるんですが、それを使った絵のハイライトに使えないっていうのは流石にまずいのではないか…
ミューズ ペーパーカラー修正絵の具(全5種)
各20ml・550円。ミューズの以下の画材用紙の色に合わせて作られた、速乾性アクリル絵の具。
- ナチュラルワトソン
- ホワイトワトソン
- ランプライト
- サンフラワー A・ M画用紙
- KMKケント
これらそれぞれの紙地の色に対応した修正絵の具です。隠蔽力も高めらしい。かなり固めに練ってあるとの説明書きがあるのでつけペンは多分不可。使う前には水で溶いて軟らかくしてあげる必要があります。
商品名の通り本来の用途は修正用なのですが、ハイライト入れにも使えるとも書いてあるので、特にナチュラルワトソンやランプライトを使って透明水彩をされる方は持っておいていいと思います。
かくいう私もランプライト愛用者なのですが、これを買うのを忘れて毎回普通のホワイトを使ってます…。ランプライトだとどうしても普通のホワイトでは浮いちゃうんですよね…そのうち買おう。
余談: 隠蔽力が高くない白もちゃんと役に立つよ!
実際に塗ってみたらそこまで隠蔽力が強くなくて「なんか思ってたんと違う…」となったものでも、それを逆手に取った使い方も出来ます。
コレはちょっとやりすぎてしまってるのですが(汗)この絵のようにあえて白を薄く乗せることで、淡い光やちょっとしたテクスチャの効果を入れたり、レンズのくもりの表現や吹雪などを表現するのに使えたりするのです。また、隠蔽力の高くない白を使って先にスパッタリングをし、後でその上から隠蔽力の高い白で軽めにスパッタリングすることで、満天の星空を表現する事も出来ますね!(そんな空を描く機会が多いかって言う話はさておいて…)
透明水彩の場合、絵の具の白を使うのではなく、紙地の色を白と見立てて描いていく…というのが主流で、中には絵の具の白を使うのは邪道! …という過激派もいたりします。実際私もホワイトを全く使わずに仕上げる事もあるのですが、適度に白を使う事で絵の情報量が増えるので、白の絵の具を使うことは必ずしも邪道だとは思わないです。あくまで用量と用法を守って使えば、ですけども。
…これとは逆に、上から明るい色を重ねられる不透明水彩やアクリルガッシュ等の場合だと、白はマストアイテムになります。混色も白ありきな事が多々あるので、白だけは大容量タイプを単品購入する方が多い印象。
結局のところ使うならどれよ?
- 手軽さ重視→ タチカワ ピュアホワイト
- 透明水彩のハイライトで使う場合→ ホルベイン アーティストガッシュ パーマネントホワイト
- 隠蔽力重視→ ホルベイン アクリリックインク スーパーオペークホワイト or コピックオペークホワイト
- パステル・色鉛筆の場合→ コピックオペークホワイト
- マーカー(アルコール・水性問わず)の場合→ タチカワ ピュアホワイト or コピックオペークホワイト
個人的にはこう。なおオイル系や日本画・岩絵具・絵墨系などはまた事情が違ってくるので除外。
迷ったらタチカワ ピュアホワイト・コピックオペークホワイト・ホルベイン アクリリックインク スーパーオペークホワイトのいずれかを買っておけばまず間違いないかなと思います。
おわりに
アナログイラスト、特に透明水彩の場合ですと基本の使い方では白の画材は敬遠されがちですが、仕上げに少しアクセントとしてちょんと入れるだけで、絵の雰囲気がガラッと変わります。普通に塗るとそこまで隠蔽力がないものでも、重ね塗りすれば隠蔽力を上げる事は出来ますし、あえてその薄さを活かした表現をしたい時には有用です。
とはいえ自分の画風にあったホワイトはやはり人によって変わってくると思うので、余裕があれば色々な白の画材を試してみるのもいいかなと思います。